為替市場のお隣に位置する仮想通貨市場はイーロンマスクが余分な発言をしたことでビットコインが乱高下をした後も上下動が止まらず、既に空中遊泳のようなボラティリティを示現する猛烈な相場状況になってきています。
FXと仮想通貨に関しては何を言ってもインサイダーにはなりませんから過剰に反応する市場のほうが問題と言えば問題ですが、こうした相場状況に遭遇したことがないだけに市場参加者のセンチメントがころころ変わるのも相場の動きに大きな影響を与えていることがわかります。
17年から18年にかけて総じて85%前後の決定的下落に見舞われたことを思えば半値ぐらいの下落はまだまだ序の口と感じる市場参加者も多いようですが、はるかに高くなった価格水準から言えば実額としての損失はかなり莫大であり、レバレッジをかけて売買しているデリバティブ取引の向きには到底耐えられない相場になっているのが現実です。
イーロンマスクの発言後の今回の相場の下落は、中国によるビットコインのマイニングやトレーディングの取り締まりの報道が引き金を引いた形になっていますが、実際は一旦下落が始まれば山火事の原因がなんであれ焼け野原になるのと同じように制御不能の下落相場が展開することになるだけに、ここからの相場の動きが気になるところです。
何が材料で動いているのかわからない状況に
昨年のコロナの給付金支給を機に金融市場に大量参入してきた米国のミレニアル世代は、株にせよ仮想通貨にせよ大暴落といった局面に遭遇したことがないため、常に相場には強気の姿勢を維持しており、下がれば絶好の押し目として買い向かうことから、ビットコインをはじめアルトコインの現状における猛烈な上下動では参入するたびに損失を抱えることになっているようで、外から見ている以上にその損失は広がっているようです。
19日のNYタイムでは含み損を抱えた向きが一斉に出口に殺到することとなり、仮想通貨以外にも利益の出ている株が売られるなどいわゆる「ミンスキーモーメント」と呼ばれるような状況が市場に示現することとなりました。
20日以降はこのような取り付け騒ぎのような相場は落ち着いていますが、ビットコインは相変わらず上げたり下げたりを繰り返しており、一体何が相場を動かしているのか不明な状況に陥っています。
為替への影響はいまのところ限定的
ビットコインの大幅下落段階ではかなり大きな資金がドル買いに動いてくるのではないかといった警戒感が高まりましたが、今のところはそうした動きは見られずに済んでいます。
ただビットコインのみならず、すべての仮想通貨がこうした不安定な動きを延々とつづけている状況下では株や為替に影響が出ないとは断定できず、この先も相場の急変が金融市場全体の暴落の引き金を引く可能性についても注意すべき状況が続きそうです。
とくにデリバティブ取引では強制ロスカットが発動すると市場参加者が一斉に損切となることから不測の暴落と引き起こしやすいのが現状で、ビットコインの1日1万4000ドル超の下落などもこうしたロスカットの施行が大きく影響しているものと見られています。
ドル円で考えれば年間を通じた値幅が10%程度ですから4割下げるということは110円がいきなり66円になったようなもので、この下落幅は過去の大暴落でも誰も体験したことのないレベルであることはしっかり認識しておかなくてはなりません。
こうした状況が起きること自体、バブルの末期的症状に思えて仕方ありませんが、このバブルは2008年のリーマンショック前などとは異なり中央銀行が自ら引き起こしているものであるだけに簡単に破裂してお仕舞になるとは思えないものがあり、足もとの状況はだれも経験したことのない前人未到の世界に入っていることを強く実感させられます。