市場はいよいよ週明け16日(日本時間では17日午前3時)に発表となる6月のFOMCの結果を見極めるつもりなのか、株も為替も動かない状況に突入しています。
そんな中で元FRB議長であったイエレン財務長官が不思議は発言をして物議を醸しだしています。
今月6日、バイデン大統領が掲げる総額4兆ドルの歳出計画の実施で来年以降もインフレが続き金利上昇を示現する可能性をイエレン長官は示唆しましたが、これは米国にとって好ましいものであり、推進すべきものであると根拠を疑われるような発言をしはじめて注目を浴びています。
われわれはあまりにも低過ぎるインフレ、およびあまりにも低過ぎる金利とここ10年にわたって闘ってきたと語っていますが、自らがFRB議長だったときは株価が崩れるのを酷く心配して長い時間利上げができなかったのはまさにこの人物が議長であったことが大きな理由であり、今更大した問題ではないと言い抜けるのには違和感を感じる次第です。
イエレン議長はさらにもはや二度と金融危機は起こらない、FRBは優秀で失敗することはないとも発言していますが、経済の先行きはだれにも判らないのが現実ですからなぜ今更こんなに稚拙な発言を繰り出してくるのか、同氏の素人感がある口ぶりに違和感を感じている市場参加者も増えているようです。
バイデン政権はそもそもここからのインフレ到来を全く織り込んでいない
バイデン政権が掲げている6.1兆円規模のバラまき予算は共和党もいるわけですから議会でそのまま原案が通過するかどうかはまだ不明の状況ですが、行政管理予算局が提出した72ページに及ぶ付帯資料によれば既に実態経済では示現しはじめているインフレを全く織り込んでいないようで、2031年まで年間インフレ率2.1~2.3%で想定しており、10年債利回りもこの先4年については1.4~2.1%としインフレ率を下回り続けるとしており、このままでは確信犯的にFRBにもテーパリングや利上げは行わせないようなつもりであることが強く窺われます。
多くの中央銀行が伝統的な手法で政策決定を行っているわけですから、FRBも同様に同じ判断基準で政策判断をするかのような素振りは見せるわけですが、この政権下では年内にせよ年明けにせよ市場がテーパリングを予測してもなにもしないで突っ走る確信犯的行為に及ぶ可能性が高まりを見せています。
こうなると経済指標で良好な数字がでるたびに市場はテーパリング予想から株は下落、債券金利は上昇し、為替もそれについていくことになるのでしょうが、結果FOMCなどで何も行われずに事実で下落するという動きを延々と繰り返しそうな気配が強まりを見せています。
足もとではリバースレポに大量資金供給実施でとにかく債券金利を上げさせないFRB
FRBは足もとでは政策金利誘導、端的に言えば低金利遊動を間違いないものにするために翌日物リバースレポの応札に積極的に応じており、6月9日には5029億ドルとはじめて5000億ドルを上回る応札に応じています。
これにより短期金利は大きく下落するようになっており他の債券金利にも影響を与え始めています。
中央銀行が債券金利に手心を加えて制御しようとするのは何も今に始まったことではありませんが、FRBは間違いなく利上げよりも制御することを念頭に政策を実施しているのは間違いなさそうでこうした動きは今後もさらに続きそうな状況です。
こうなると為替の世界ではインフレが密かに進む中にあってドル安がどこかのタイミングで明確に示現する可能性もありそうで、バイデン政権とFRBが連動した動きについてはこれからも注意深く見守る必要がでてきているようです。
トルコではエルドアン大統領が中央銀行に利下げの件で強く関与していることが話題ですが、実はホワイトハウスとFRBもたいして違わない関係であることを改めて感じさせられる次第です。