米国では景気の回復感が経済指標にも色濃くではじめていますが、それとは裏腹にかつてなかったような事態が巻き起こりはじめています。

それが被雇用者が主体的に選択する離職率の上昇であり、平たく言えば労働者が自らの意思で仕事を辞めるケースが激増しはじめていることです。

失業と言えば経営者によってクビを切られるケースしか思い浮かばないものですが、足もとでは4月労働者が自ら仕事をやめるという離職率が過去最高の2.7%を記録しており、民間企業だけにしぼった場合には3.1%という過去に前例のない高い水準を記録しはじめており、離職率は一向に低下する気配を見せていません。

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明白ないくつかの理由が顕在化

これには既にいくつかの明確な理由があることが判っています。

まず最初に思い当たるのは昨年から今年にかけての米国における失業給付金の増額の問題で、多くの労働領域で働かずに給付金をもらったほうが収入が多いという状況が作りだされている点で、労働者が自ら離職して積極的に失業者の道を選んだことがこうした数字の上昇に確実に寄与しているのはどうやら間違いないようです。

またコロナ禍で60才以上の熟年労働者が仕事をリタイアしたケースも多くなっているようです。

退職した人たちは地方で暮らすなど新たな生活を始めるケースが増えているといいますが、その雇用を穴埋めするために企業はこれまで以上に雇用にあたっての雇用賃金を上げざるをえない状況に陥っており、コストプッシュインフレが顕在化していることがわかります。

この層の雇用の減少は過去15か月で530万人に上るとされていますから深刻な労働力不足となっていることが窺われます。

米国ではポストコロナで労働者自身が仕事を選択する時代が到来

米国では労働者が積極的に自らの仕事を選択する時代が訪れているようで、労働単価にしてもテレワークなどの雇用形態にしても労働者自身が相当積極的に選択しはじめていることがわかります。

本邦の悲惨な雇用需給の状況とは大きく雇用環境が異なっており、既にポストコロナの米国社会では労働者自身が仕事を選択する時代がやってきていることがわかります。

米国の経営者は雇用コストに敏感で労働単価が高まると立ち所に雇用を中止すると言った話はよく聞きますが、そんなことは言っていられないぐらい雇用の確保が切迫していることが窺われます。

一つ面白いのは職種によってこうした状況はかなり異なるようでフードサービスや宿泊私設、レジャー関連では離職率は2019年レベルを下回っており、単純労働はそれほど需給が逼迫していないことを示唆しています。

イエレン財務長官やFRBの主要メンバーは二言目にはインフレは一時的という新興宗教の呪文のようなことを唱え続けていますが、現実の米国社会は雇用一つとってもコストプッシュインフレが顕在化しており、安穏とはしていられない状況が明確になってきているようです。

下のチャートは職種ごとの離職率をチャートにしてあるものですが、よくよく見ますとその状況はかなり異なっていることがわかります。

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マクロ的にみますと確かに雇用はあきらかに売り手市場になってきているわけですが、有色人種、アジア人種などだけを取り出した場合失業率は依然として高く、しかも雇用の需給バランスは白人のように大きく改善していないのが実情で、バイデン政権としてはこの領域で事態が改善しすべての米国労働者に雇用機会が改善することを強く推進する動きに出ている状況です。

結果的に離職率全般が低下することにより大きな改善がはかられることになるかどうかが今後の注目ポイントであり、これからの米国雇用統計においても有色人種の雇用改善の進捗に関心があつまることになりそうです。

また、AIやロボットの導入といったものがこれを機会にして強力に推進されることになるのかどうかにも注目が集まります。