円キャリートレードとは、超低金利の日本円でお金を借り、その資金を金利の高い外貨建て資産で運用する取引のことを指し、別名「円借り取引」とも呼ばれています。

円の具体的な調達場所は日本の短期金融市場となり、外貨建てで資産運用することで、金利差益を得ることができます。

外貨建て資産には、FX、外貨預金、国債、社債、外国株式、コモディティ、海外不動産(REIT含む)ヘッジファンドなどがあり、日本と外国の金利差を利用し取引を行います。

日本はマイナス金利こそ終了したものの、米国など他の国々との金利差は依然大きいままであるため、多くの投資家が円キャリートレードを行っており、その市場総額は1兆ドル以上とも言われています。

10年にわたる異次元緩和により多額の資金が米国金融市場へ流出

黒田前日銀総裁が2013年から始めた異次元緩和により、実に530兆円もの資金が米国金融市場に流れ込んだと言われています。

さらに今年1月から開始された新型NISAにより、日本から米国への流出額はかつてないほどのレベルに達しています。

この資金が日銀の利上げを理由に国内に回帰するような事態になれば、米国の金融市場が大きなダメージを受けることは間違いないため、米国財務省としては11月の大統領選挙まで何としても利上げを行わない様、日本政府に働きかけていることが窺えます。

 

円キャリートレードの巻き戻しとは、何らかの理由をきっかけに多くの投資家が円のキャリートレードを解消(反対売買)することにより、為替市場が一時的に円高に向かう状況を指します。

円を借りて投資を行い、その対象を手放した後、外貨が円に戻されることで円高が発生します。

最近では、円で資金調達を行い、その資金を欧米の金融市場で株や債券の投資にあてる動きが世界的に目立っており、一度円キャリートレードの巻き戻しが起これば、あちこちに大きな影響が及ぶことは間違いありません。

円キャリートレードの巻き戻しで懸念される市場への影響

円キャリートレードの巻き戻しが発生した場合、為替市場には様々な影響が及ぶと考えられます。

円キャリートレードの巻き戻しは、外貨を円に戻すために円を買い戻す動きであるため、一時的に円高が進行するだけでなく、市場参加者の心理にも影響を及ぼし相場状況は不安定になることが予想されます。

ただ、円キャリートレードの巻き戻しがいつ起こるかを予測することは難しいため、こまめに相場状況をチェックする以外に対処法がないのが実情です。

2008年と2011年にも示現した大規模な円キャリートレードの巻き戻し

2008年のリーマンショック時には、大規模な円キャリートレードが発生しました。

当時、多くの投資家がリスク回避として高金利の資産を売却し、安全資産である円を購入する動きが強まりました。

それにより円は急速に買い戻され、2008年9月から2009年3月にかけては、円は対ドルで約20%も上昇する結果となり、、この円高が日本の輸出企業に大きなダメージをもたらし、日本経済全体をも揺るがす深刻な問題へと発展しました。

さらに2011年3月にも、東日本大震災の発生直後、投資家は日本経済への不安から一時的にリスク資産を売却し、円を買い戻す動きが見られました。

特に震災発生後の数週間の上昇は著しく、一時的に1ドル76円台を記録したことは記憶に新しいところで、この円高が震災からの復興を目指す日本経済に、ネガティブな影響を与えることになったのは言うまでもありません。

円キャリートレードの巻き戻しはいつ発生するのかを予測することは非常に困難なことですが、一度発生すれば世界経済全体に大きな影響が及ぶことはしっかりと認識しておく必要がありそうです。