米国の撤退が進むアフガニスタンで政府軍との戦闘を続けてきた反政府武装勢力のタリバンが首都カブールを武力的に完全制圧し、16日にはタリバンが正式に勝利宣言をしました。

これを受けてアフガニスタン内では国から逃れようとする人で溢れ返り、空港にも脱出しようとする市民が押しかけて大混乱に陥っています。

Photo AP アフロ https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210816/k10013204961000.html

為替は月曜日の朝に窓開けで下押しして始まるかと思われましたがそれほど大きなインパクトはなく、全体的に円買いスイスフラン買いが強まりましたが、ドル円は暴落とまでは行かない動きに留まっています。

日本時間の朝5時近くにホワイトハウスに登場したバイデン大統領は、アフガニスタンからの米軍の撤退は間違っていないとしてそのまま続行すると発言しました。

自己弁護気味の発言でアフガニスタンを見捨てるのかと言った批判の声も高まっています。

Photo Bloomberg https://www.bloomberg.com/news/articles/2021-08-16/biden-says-he-stands-squarely-behind-afghanistan-withdrawal

米軍がすぐに引き戻してタリバンと対峙するということは短期的にはないと思われますが、為替相場では有事の際のドル高が現実化しており、ドル円は円買いも進んだことから動きは鈍く、安全資産買いという意味でのドル買いはここからさらに強まりそうです。

特に新興国の資産が安全資産へと逃避した場合はドル需要がまた高まる可能性があり、ここからの相場の動きにはかなり注意が必要になるでしょう。

米国は既に第二次世界大戦時を超える財政出動をしており戦争どころではない

民主党政権は軍産複合体との連携性が強く、事あれば戦争をする政党です。

オバマも政権スタート直後にノーベル平和賞を受賞したことから戦争を嫌う平和主義者のようなイメージがつきましたが、実際に彼の政権の8年間は過去の誰よりも空爆をおこなった米国大統領としての歴史が残っており、結果的に完全に軍産複合体に取り込まれてしまいました。

そのオバマが米国を世界の警察から降ろしたことがアフガン撤退にも繋がっており、その結果としてアフガニスタンでタリバンが全権掌握してしまい、これは民主党にとってマイナスなので、今後バイデンがさらに批難を受ける重要な材料になりそうです。

しかし新型コロナの感染で無制限QEとなっているFRBの政策に加え、莫大な財政支出を行っている今の政権が抱える連邦債務は日本円で3000兆円を超えており、この金額レベルは米国が第二次世界大戦時に支出した金額レベルをはるかに超えたものとなっています。

つまり米国には他国のためにタリバンと戦争を復活させてアフガニスタンを取り戻すような財政的余力はないと思われます。

ただ、新しく樹立されるであろうタリバン政権が周辺国を含めてどのような姿勢で臨んでくるか次第ではこの地域の地政学リスクがかなり危険なレベルに高まる可能性は否定できず、為替にも大きな影響がでることが予想されます。

足もとではそれほど急激な相場の動きにはならずに推移していますが、突然状況が変化することもあり、油断は禁物です。

これまで為替相場のテーマとしてはFRBのテーパリングがいつ実施されるのかが最大のものとなっていましたが、ここからは複合的な材料に目を配ることが必要でしょう。