10月18日The American Prospectというサイトが、パウエル議長は2020年10月1日に個人口座から100~500万ドル相当の株式を売却したという取引情報の流出を報じたことから、非常に大きな問題になりつつあります。

パウエルのヴァンガード株式市場指数ファンドからの株式の売却はこれ以前には報告されておらず、ダウ平均が大きく下落する前に行われていたとされています。

しかも実際の売却のトランザクションの詳細も開示されており、少なくともこの売却が事実であることはほぼ間違いありません。

株式売却は9月15日から16日のFOMCの会合の後に行われたということですが、それでも議事録が10月7日に公表される前に売り抜けられています。

さらに問題なのは、トランプ前大統領が緊急に必要な新しい経済刺激策を実施する旨を発言し始めたタイミングであり、しかも偶然か事前に知っていたのかトランプが新型コロナに感染したことを発表する1日前に実施されています。

会議録を見るとパウエルはこの10月1日に当時の財務長官だったムニューシンとなんと4回も接触しており、すべてを事前に知っていた可能性が浮かび上がっています。

また12月16日のFOMCの会合2日後にもパウエルはMSCI EAFE ETFを売却しており、一定の利益を得ていたことも明らかになっています。

パウエルは前職の段階ですでに5500万ドル程度の純資産を保有しているとされており、今回明るみに出た売却内容が決定的に大きな利益獲得に結びついたとは言えませんが、これまでにカプラン、ローゼングレンに加えてクラリダまでもが証券の売却等で利益を得ていたことが問題になっており、3名とも引退という形で辞任をしています。

パウエルは民主党左派であるエリザベスウォーレン上院議員から議会においてFRB高官の監督不行き届きを強く指摘されていますが、自身も株取引を行っていたことが判明したことからさらに立場は悪くなりかねず、もはや次期FRB議長に再任されるのがさらに難しくなってしまいました。

実際のパウエルの株関連の売買履歴 Data ZeroHedge

民主党左派が黙ってはいない状況に

この問題が発覚したのが10月18日で、議会の反応などはこれからですが、現役FRB議長の取引履歴がでてきたことで来期の任命どころか足もとの職責の全うすら危なくなりそうで、仮に早期に辞職ということになると11月のFOMCで何かテーパリングなどの実施が決定される可能性は相当低く、ここからの動きが非常に気になります。

ウォール街の金融機関はこの件はそれほど大きな問題ではないと見ており、依然パウエル続投の観測を挙げていますが、民主党左派の議員がこれを寛容に見過ごすとは到底思えず、新議長が就任する可能性は一段と高まりました。

このタイミングでのこの種の情報が流出されるというのはパウエル追い落としのための作為的なものという見方もできそうですが、現役FRB議長が自らの政策決定を知りながら利益相反と捉えられる株の売却を行っていたことはインサイダーとの指摘を受けることになるだけに決定的なダメージを受けることになるでしょう。

バイデン政権での事実上のFRB議長決定権者とも言えるイエレン財務長官がどこまでパウエルを庇うかも大きく注目されるところですが、トランプ政権下で自分を追い出して議長の座についたパウエルを手厚く庇うとも思えず、あっさり交代で落ち着く可能性が高そうです。

FRBの体制が前倒しで大きく変更になった場合、市場が織り込んだテーパリングの問題が後ずれする可能性があるので、為替では一転してドル安に動くリスクも考えておく必要がありそうです。