米国はいよいよ感謝祭を迎えここから年末商戦が華々しく展開される時期を迎えました。
しかし11月23日、リテール株の一角であるベストバイの株価が急落し一時17%安という猛烈な下落を示現することとなり、リテール市場が大きな変調をもたらし始めました。
ベストバイの暴落は急激な業績悪化によるもので、その原因は全米の各地で起きている組織的な集団窃盗のようです。
コロナ禍を克服してようやく経済回復も見えてきている米国社会ですが、実は無法地帯ができあがっているようで、ロサンゼルス、サンフランシスコ、オークラ ンド、シカゴ、ニューヨーク、マイアミなどでこの極めて組織的に展開されている集団窃盗に多くの店が被害を受けています。
サンフランシスコでは連日ブランドもの店や高級百貨店が襲撃の被害に
先週の週末19日、サンフランシスコユニオンスクエア周辺のいわゆるブランド商品専門店が同時多発的な強奪にあい、ルイヴィトンやイブサンローラン、ウェストフィールド・サンフランシスコ・センター内のバーバリーとブルーミングデールズ、さらにマーケットストリートのウォルグリーンが大きな被害に合っています。
さらに翌日にはサンフランシスコ郊外ウォルナットクリーク地区にある高級百貨店に、目出し帽をかぶった80人以上の集団が公然と強奪に参加するという事態が起きています。
ごく一部は現行犯逮捕されているようですが、その数があまりにも多いことから抑止することはできず、事実上見逃しているような状態になっているといいます。
こうした強奪行為はフラッシュモブ窃盗とも呼ばれているようですが、民主党系の知事がいる州では警察の予算が削減され警官の数が増えず、さらにバイデン政権が公務員に対してワクチン接種を義務付けたことから解雇される者、反発して自主的に辞める者が激増中で都市部を中心に警察機能が空回りしているとの指摘もでています。
そんな中で行われる同時多発的集団略奪は手に負えず、事実上やりたい放題になっている地域が増えている状況で、ブラックフライデー以降の米国の一大消費シーズンに水をさすのは避けられません。
サプライチェーンの混乱でそもそもお店にプレゼントがない状況も顕在化
感謝祭翌日のブラックフライデーからクリスマスまでのほぼ一か月間は、人によっては年間消費の半分近くをこの時期に行うと言われるほど顧客の個人消費が伸びる時期であることで知られていますが、今年は上述の暴動以外にもプレゼントを買おうにもコロナ禍のサプライチェーンの混乱から店頭に商品がないとい声もあり、リアルな店舗をはじめネット販売でも手に入らないものが続出しています。
これまで過去2年余り我慢に我慢をかさねてきた米国の消費者はここぞとばかりリベンジ消費に力をいれるタイミングになっていますが、全米小売連盟によると今年の年末商戦(11~12月の売上高は日本円にして約96兆から98兆円)は昨年と比べ10%近い増加が予想されていますが、実際には欲しい商品が手に入らなくなる可能性が高く、クリスマスに向けた相場の動きにも大きな影響を与えかねません。
米国経済は世界で最もコロナ後の回復が早い国として知られていますが、どうも流通は完全には元に戻っておらず、クリスマスに向けた消費に暗い影をさすことも覚悟しなくてはなりません。
コロナの感染拡大が続いた過去2年間で、米国国民はなんと日本のGDPに匹敵する日本円にして500兆円もの預金をすることができたと言われています。
もちろん貧困にあえぐ人も多いはずですが、年末消費が万全な体制であるにもかかわらず商品が店頭にもネットにもないというのは消費者の不満を相当高めることになりそうです。