基本的に為替というのは各国の政策金利、実質実効金利のレートの差から安い金利の通貨を売って高い通貨を買うというのが基本的な取引の動きとなっており、誰もが各国政策金利を気にしながらトレードしているのが市場の正しい見方となっています。

しかしながらリアルな相場を見ると必ずしもそうではないことが窺えます。

為替を扱う個人投資家はしっかりと問題として理解しておきましょう。

直近の米10年債利回りとドル円を見てみると、いよいよFRBがテーパリングを開始し2022年には利上げが見込まれ始めていることから確かにドル円は上昇していますが、実はこのチャートではフルにカバーできていない2015年から2018年末までFRBは緩和措置を正常化しようとして利上げを行っており、その間ドル円は125円の高値から110円まで下落するという全く逆さまの動きを示現しています。

日々取引をしていると気づかないことですが、実は利上げの可能性が市場で完全に織り込まれてしまったり実際に利上げが実施されてしまうと為替は逆に下がってしまうこともあります。

今週FOMCの年内最後の政策決定会合が開催されますが来年の6月にはすでに利上げが織り込まれてしまっており、テーパリング加速も決定した場合には材料出尽くしから逆にドル円が下落に転じるといった想定外の事態に陥ることも十分に考えておく必要があります。

こうしたパラドックスが全く起きないのがトルコリラ

利上げ、利下げと為替が逆に動き始めるというのはドル円に限ったことではなく、NZドル円も2016年に利下げを行ったところNZドルが大きく上昇してしまったという逆さまの動きが見られています。

ただこの手のパラドキシカルな動きがまったく出ない通貨もあります。

その典型がトルコリラで、強烈なインフレ下で利下げを継続的に断行すれば実質的なマイナス金利なので、逆さまの動きが出ると言ってもさすがにトルコリラを買う市場参加者はいなくなります。

こうした通貨には例外の状況は発生しません。

トルコ中銀の場合は今回の会合でさらに利下げを行うのか、一旦スルーして様子を見るのかによって相場の動きが変わることが予想されますが、それでも飛躍的に通貨が上昇するということは考えにくいでしょう。

相場は経済理論実践の場ではないことは十分認識すべき

株や為替相場では経済学の基本的な動きから逸脱した相場が示現することは日常茶飯事です。

よく経済理論的にはおかしいという指摘をする投資家も多くみられますが、ヘッジファンドのような投機筋から個人投資家、実需、さらに機関投資家まで入り乱れて売買をしているので様々な事情が相場に持ち込まれ、金利が上がったらその通貨は上昇する、逆に下がったら下落する、というように単純な結果が現れないことはしっかり認識しておかなくてはなりません。

特にここからの相場では既に利上げにシフトしはじめた中央銀行がある一方で、ECBのように完全に利上げ先送りを鮮明にしている中央銀行や、インフレ懸念が世界的に顕在化しても日本銀行のようにお構いなしで緩和を続ける中銀も存在しているので、その結果として現れる各通貨ペアの動きが非常に複雑になるのは当然の状況ということになります。

今週は後半に主要国の中央銀行会合の結果発表が開示されますが、すべての結果として各通貨ペアが想定外の動きになることには相当な注意が必要です。

なにより自ら方向を断定してその通りにポジションを予め保有しておくことはとても危険です。

市場参加者が少ない中では流動性が確保できず暴落的な下落に巻き込まれる危険性すらあるので、あくまでそういったリスクを抱えて取引していることをしっかり理解しましょう。