Photo TASS通信

本邦個人投資家にとって非常に関心の薄いロシアのウクライナ侵攻に関する問題ですが、EU圏とその周辺諸国では非常に大きな問題として顕在化しつつあります。

今から7年前ウクライナ南部のクリミア半島をロシアが併合しウクライナ内で紛争が起こりましたが、このウクライナはEUとロシア双方の国境に接する国で旧ソビエト連邦の一部であったことからロシアとは社会的、文化的につながりが深く、ロシア語も広い地域で使われている極めて親和性の高い国です。

ウクライナは近年EUに非常に接近していますがロシアはこれに反対の姿勢を強めており、西側の集団防衛機構NATOに対してウクライナの加盟を認めないよう保証を要求しています。

こうしたことからEUや米国はウクライナの外側にいる10万人規模のロシア軍が侵攻するのではないかという危機感をもっており、プーチンも西側の攻撃的姿勢が続けば相応の報復的軍事行動をとると表明していることから、これがどういう形で収まるのかが非常に大きなポイントとなってきています。

現状ではすぐに侵攻がはじまる気配ではなく、米国とロシアの両政府は10日スイス・ジュネーブで2国間の「戦略的安定対話」を開催していますが、米国からシャーマン国務副長官、ロシア側はリャプコフ外務次官らが出席したものの両国の主張の溝はかなり深く、さらに12日に北大西洋条約機構(NATO)とロシア、13日にはロシアも加盟する欧州安全保障協力機構(OSCE)もそれぞれ協議が開催されることになっています。

ユーロは地政学リスクの真っ只中だがリスクが緩和されればユーロ支援材料に

足もとではECBがインフレは一時的と言う姿勢を崩してはいませんが、実は欧州圏でも米国同様物価上昇は一時的ではない状況に陥っており、ユーロには上昇機運が高まっています。

ただロシアのウクライナ侵攻問題が現実になれば地政学リスクからユーロは売られることになりますが、今週中に予定されている各種の会談から緊張緩和がはかられればユーロに対する支援材料となりユーロは各通貨に対して強含むことも考えられ、その動向を注視する必要があることを十分認識しておきましょう。

市場ではFRBの政策姿勢に注目が集まっていますが、同時並行でユーロに極めて大きな影響を与えるリスクイベントが進行中であることも忘れてはなりません。

本邦個人投資家はどうしても日常的に接するメディアの報道に乗る内容にばかり関心が集まりやすいですが、ウクライナ問題はEU圏にとって地続きのリスクの問題であり、しかもEU諸国は冬の暖房のためにロシアからの天然ガスの供給に依存するという非常にクリティカルな材料も抱えています。

ここでロシアとの関係が大きく崩れてしまうと、資源確保という別の安全保障の部分でもかなり大きなリスクを抱えることになることから、気が気ではないというのが現実の状況であると思われます。

プーチンも簡単にウクライナに攻め入って自国のものにするといった浅はかな行為には及ばないとは思われますが、2014年にまさかのクリミア併合を実現しているだけにまったくないとは言い切れない点にも大きなリスクが残ります。

ウクライナも冬の真っ最中でなにかが起きるとすれば2月後半ではないかといった不気味な予測も出回りはじめていますが、ややもすれば冷戦拡大の引き金にもなりかねないこの問題は当分為替にも大きな影響を及ぼすことになりかねず、もちろんドル円にも相応の影響が出る可能性を視野にいれておかなくてはなりません。