本邦がお盆休み明けとなった8月第3週は市場参加者も限定的でおもむろに動き始める相場となりましたが、結果的には結構想定外の動きを示現する一週間となりました。
週初133.45円で寄り付いたドル円は、米8月ニューヨーク連銀製造業景気指数がまさかのマイナス31.3を示現したことから132.55円にまで下落するというまさかの事態となりましたが、その後みずほ銀行が日銀に預けている当座預金の一部にマイナス金利適用されていることとの報道が出た途端、海外勢が一斉のドル買い円売りに転じることとなりました。
その後は大幅上昇となってセントルイス連銀ブラード総裁による「9月会合での75bp利上げを支持したい」とのWSJでのインタビュー記事が掲載されるとさらに上方向に動くことになり、週内で先週末のNYタイムにおいて137円台を回復するといった驚きの上昇を実現することになりました。
その一方で一気に値を落したのがユーロドルで、週初1.0263という決して大きく戻したレベルではないところからスタートしたものの、EU圏の経済の先行き不透明感とエネルギー起因でのインフレの高騰化リスクなどが高まることとなり、経済指標が発表になる毎にユーロが売られる展開となって週末金曜日のNYタイムにはパリティ割れかと思わせるほどの下落が進むこととなりました。
さすがに週末の買戻しもあって一気に下抜けることはありませんでしたが、週明けパリティ以下に割り込むのはもはや時間の問題のようにも見える相場状況になってきています。
相場のことを断定して考えるのは禁物ですが、それでもパリティ以下に進行する可能性は置き込んでおくべき状況になってきています。
パウエル講演は26日日本時間午後11時から
週明け最大の市場の注目点であるジャクソンホールにおけるパウエル講演は26日日本時間の午後11時からなので、恐らく実施の1時間ないし2時間前には講演内容のミニッツが公開され、相場はそこから前倒しで動くことが予想されます。
ジャクソンホール会合についてはこのコラムでも既にご紹介していますが、市場の期待はパウエルがかなりハト派的な発言をしてこの先利上げを強力に行わないことなので、それに沿った発言がでれば株価は続伸、為替は債券金利下落と相関してドル安を示現する可能性もあります。
そもそもこの市場期待は市場が一方的に作り出した話であり、パウエルがそれと逆行してかなり強い姿勢でインフレ対策の利上げを強調するようなことがあれば米債金利は上昇、ドル円もそれに引きずられて上昇し株価は相応の下落に転じることが予想され、同日の午後9時あたりからは相当緊張感をもって相場に対応することが求められそうです。
事前の5日間は様々な憶測で相場が動くことも予想されますので、慎重なトレードを心がけることが求められます。
ドル円は再度上昇軌道に乗ってきた動き
ドル円は先週3円以上動くという結構驚くべき相場状況を示現しています。
とくに8月のお盆あたりはそれなりに下押しを期待していた向きにとってみると、全く押し目らしい押し目もなく、先週段階ですでに137円レベルに回復したことでここから9月に向けて再度139円台中盤を上抜ける動きがでる可能性に注目が集まります。
先週5日間のドル円を動きを見ると時間足によっては多少見え方が異なるものの、週初から大きな押し目を作ることもなく一貫して上昇を果たしており、テクニカル的には再度140円方向を試す展開になりつつあります。
ただ、6月のように日銀と徹底対峙して日本国債を売ってはドル円を買い上げるという凄まじい投機筋の姿はまだ戻ってきていないこともあり、上昇は比較的緩いものになることも想定され、まずはジャクソンホールの前までにどれだけ値を戻すことができるかに市場の関心が集まりそうです。
また、ジャクソンホールを超えると米国の9月第一週の月曜日の休日となるレイバーデーまでは毎年株もドルも上昇することがアノマリーとなっており、特別大きなことがなければさらに上昇が期待できる場面でもあるので、とにかく押し目があれば買い向かうという姿勢が重要です。
ユーロドルはいつパリティ下抜けになるかに注目
ユーロドルはドルの動きとは全く反対で、何をしてもいいところなしの経済指標に頭を押さえられて週明け早々にもパリティを下抜けそうな状況になってきました。
7月の下落の場合、投機筋がとにかく無理してでもつけに行くといった強引な相場展開も見られましたが、今回下落が起きればもっと重苦しい展開となるのは間違いなく、当面パリティ以下の水準で相場が上下することも覚悟しておかなくてはならない状況です。
先週一週間のユーロドルの動きを見ていてもほとんど値を戻さずに下落一辺倒の5日間が続いており、週初にはこれがさらに加速する危険性も高まっています。
8月23日にはユーロ圏8月製造業・サービス業PMI速報値の発表が予定されていますが、これが市場期待をさらに下回る結果になれば下落を大幅に加速させることにもなりかねず、まずはそれに注意することが必要です。
先週段階ですでに短期の投機筋がかなり為替相場に戻ってきていることを感じさせられる相場となっています。
アルゴリズム主体の相場では人の裁量取引ではありえないような動きを示現するため、8月相場は意外感の大きな展開になりがちですが、ここからは人の意思がはっきりと相場水準に示現してきそうで、日頃以上に細心の注意を払ったトレードをすべき時間帯になっているようです。