9月最終週となる26日のアジアオセアニアタイムから久々にポンドが猛烈な下落を喫することとなり、対ドルでも対円でもポンドは想像を絶する下落を示現することとなりました。
日頃流動性のないアジアや東京タイムでポンドが猛烈に売りこまれるというのはかなり珍しい状況でしたが、逆にマザーマーケットではなくアジア時間の流動性のない時間をあえて選んで投機筋が売り仕掛けを行ったようにも見え、相場は朝から騒然とする状況になりました。
英国がインフレに苦労しているということは月次のCPIの発表などからも広く知られていたことでしたが、政権が交代しインフレ対策で大がかりな財政政策をとると発表した途端に市場は慌てはじめ、株は下げて債券金利は大幅上昇、通貨は史上最高の下落に陥ることとなり、世界的に相場は相当うろたえ始める結果となっています。
驚いたのは対ドルでポンドが1.03という史上最安値の領域に下落したことで、対円でもポンドは一瞬ではありましたが140円台に沈み込むというある種の異常事態に追い込まれることになっています。
原因は明白で、クワーテング英財務相が9月23日に発表した大規模な減税と、大幅な借り入れ増額、BOEの金融政策に整合性がないことが明確になったことです。
金融市場には動揺が広がりポンドや英債価格が急落、投機筋が待ち構えていたかのように週明けの市場でもポンドが朝から大きく売り込まれる相場を示現することになります。
先週上のものと同じ超長期のチャートをご紹介しましたが、すでに週明けには1985年史上最安値を下抜けたことになり、鉄板の抵抗ラインなどと呼ばれていた線も完全に突きぬけたことが明確に理解できます。
この調子では対ドルでユーロ同様パリティ以下に落ち込むのも時間の問題で、いかにドルが強くポンドが弱体しているかを改めて感じることができる相場です。
BOEは慌てて声明を発表するも効果なしの状況に
相場の急変を受けてBOEベイリー総裁は声明を発表し、金融資産の大幅な値動きを受けBOEは金融市場の動向を注意深く見守っているとしましたが、市場の緊急利上げ期待とはその内容は程遠かったことからさらにポンドの失望売りを招く結果となっています。
恐らくこのまま11月のMPCまで何もしないことになるのであればポンドはさらに下落、対ドルでは史上初のパリティ、対円でも140円に到達する危険性があり、迂闊にレベル感で買い向かうのは当面我慢したほうがいいでしょう。
インフレと経済対策、リセッション対策を両立させて政権の政策と中欧銀行の金融政策がしっかりとシンクロしていることは非常に重要ですが、ここまで市場に嫌気されるというのも珍しく、相場は中銀の政策を直視していることが改めて感じさせられます。
為替相場はドル一強の状態で97年のアジア通貨危機のような状況になる可能性も
資産市場は株から債券まで資金の持って行き場をすっかり失っており、多くの資金がドル買いに動き始めています。
市場では依然としてドルに対する需要が旺盛であることも、この流れを止められない状況を作り出しているといえます。
ただ、過去の歴史から見るとドルが市場で独り勝ちした後には経済危機が訪れたり、それに連動する形で相場の大暴落などが起きることが往々にしてあるので、注意する必要がありそうです。
とくに相場の大変動の兆候は英国市場から始まることが多いのも特徴で、1997年にアジアで起きた通貨危機の再来を予感させるような状況にも見えてきます。
奇しくもドル円はこの98年の為替相場の一大危機の時と同じ水準に戻ってきており、不気味さは一段と高まっています。
とにかくドル高ドル独り勝ちの状態はここからもまだまだ続きそうで、ポンドの取引に関係のない個人投資家もその動きを細かく観察することが重要です。
ポンドの変調を受けてユーロの動きも相当怪しくなっており、世界的に相場の流れが劇的に変化することもある程度想定しながら臨みたい時間帯となります。
なにより相場に不穏な雰囲気が漂い始めているのは非常に気になるところです。