10月21日金曜日の深夜、更に明けて10月24日のオセアニアタイムに財務省・日銀が二度の介入を行ったのはご案内の通りですが、当局は実施されたのかどうかについては一切公表を避けています。
市場の予測では2回合わせて6兆円規模と見られていますが、一応上値を抑えることには成功したもののどこまで続くのかについては相場の見方も分かれ始めています。
そんな中、米国イエレン財務長官はニューヨークでの講演後に記者団から日本政府が為替市場に再び介入しているとの報道について問われて、米国政府は日本からそのような通知を受け取っていなかったと述べています。
イエレン氏はこれまで介入が行われる場合、以前は日本から確かに通知があった、ボラティリティーに対する懸念からだと理解したが、今回は一切そうした事前連絡を受けていないと発言しました。
好意的に理解すれば本邦が介入を明確に示していないことから話を合わせているとも言えますが、米国財務省が日本に対してそこまで好意的に対応してくれているのかを考えると、かなり疑問が生じるところでもあります。
これを受けて財務省の神田真人財務官は26日、イエレン米財務長官が日本政府と日銀による10月の為替介入に対し日本が実施したかどうか、実施を示唆した介入は承知していないと述べたことは日本の介入の有無については公表しないという方針を尊重してくださっているものだと説明しています。
これが本当であるとすれば米国政府は相当日本の介入のやり方に理解を示し、それを支持しているようにも見えますが、額面通りに本当に詳細を知らないとも思われる発言でもあり、市場は二つの見方を持ち始めています。
少なくとも協調介入や委託介入はできていない可能性大
為替介入の場合、主要国が協力して協調介入を行うことが最も効果的ですが、今回の場合たとえ米国が介入に理解を示したとしても日本の単独介入が容認された程度で、米国までもが協調介入で協力したとは思えない状況です。
また、日本から米国に委託介入したかという点も相当懐疑的な見方が広がっています。
日本単独で米国財務省の管掌時間帯にほぼ終日邦銀を介して単独介入をしたというのは歴史的にみてもほとんどない話なのでそれはそれでかなり驚きがあります。
過去にも財務省は邦銀のNY支店を使って米国に断りなしに勝手に介入を行い、叱られた経緯があるので、今回もイエレンが口にしたとおり米国政府に対する事前通告や承認を得られないままにNYタイムに勝手に介入を企てたとなるとすでに猛烈な抗議を受けている可能性もあり、ここからの介入にも影響を及ぼしそうな状況になってきています。
米国メディアの報道では日米の金融当局は相当緊密に連絡をとっており、裏でしっかりつながっているといった内容も示現し始めていますが、実際のところはどうなのか市場の疑心暗鬼が続きそうです。
イエレン財務長官は通貨介入に眉をひそめ、為替レートは中央銀行による大規模な介入の結果ではなく市場で決定されるべきであると述べており、今回の財務省日銀の介入はいわば真逆のオペレーションであり、日本に対してだけそんなに好意的になれるのかどうかは疑わしい状況と言わざるをえません。
これからの介入で日米が相互理解しているかどうかが判ることに
財務省日銀はあくまで投機筋による過度なドル円の上昇を抑止するために介入を行うとしてきており、実際に1日に2円以上相場が動いたときに介入を行ってきたのは事実です。
しかし先週金曜と今週月曜の二回の介入の結果は150円というのが一つの防衛ラインのように市場にはみえており、特に24日月曜日の介入はあからさまに一定水準を超えさせないように上値を叩いていることから、今後はこの150円水準での攻防が注目されそうです。
しかも投機筋を完全に敵視しそれと対峙することを鮮明に口にしていることから、ここからは本格的な投機筋と当局の対立構造が深刻化することも考えられます。
日本の金融当局は介入原資は無限大と豪語していますが、投機筋もレバレッジをかければ400兆円以上の原資を投入可能とされているので、本当に本邦金融当局と投機筋が徹底対峙する局面となった場合には1992年のBOEとジョージソロスファンドの対決の再来といった局面を迎える可能性もあり、心配の種は尽きません。
また、今週は28日に再び日銀政策決定会合が開催されるため、黒田総裁の会見で2~3年は利上げしないという話が再確認されたところで相場が飛びあがって150円を超えれば延々と介入が実施されるのかどうかも注目されます。
いずれにしても今回の為替介入は当局の思い通りには運ばない可能性が高く、しかも米国の理解がどこまで得られるのかも大きな疑問が残ります。
11月ドル高になりがちな相場にむけての動きがさらに注目されます。