Photo Reuters

米商品先物取引委員会・CFTCは、3月27日仮想通貨取引所の大手バイナンスと同社のチャンポン・ジャオCEOらの経営陣を提訴したと発表したことから同社の株価は大きく下落し、さらに仮想通貨自体もビットコインを筆頭に駄々下がりの状況を示現しています。
CFTCの訴状内容としては、違法な交換所が運営されており、しかもコンプライアンス対策に実態がなかったと指摘されています。
同社は少なくとも2019年7月から米の法律に違反して米国の利用者に商品デリバティブ、具体的に言えば仮想通貨FXの取引を提供・実行しており、この取引を行うためには本来CFTCに登録する必要がありますが米交換所運営バイナンス・ドット・USは未登録であったことが提訴の理由となっています。

米国の場合、米国民に金融サービスを提供する時に海外から取引できるようにするのは不法であり、あくまで米国内で登録することが義務付けられています。
CFTCは今回の提訴で罰金や不正利益返還の命令、恒久的な取引・登録禁止を求めているため米国では早晩取引が不可能になりそうで、仮想通貨取引業界にとってはまた大きな痛手となりそうな状況です。

また、米ニューヨーク連邦裁判所は同日、経営破綻した暗号資産(仮想通貨)融資会社ボイジャー・デジタルを、今回問題になっている交換業バイナンス・ドット・USが買収する計画の仮差し止めを命じています。
米政府が買収の合法性に異議を申し立てた訴訟に時間的猶予を与えるためであるのがその理由ですが、この様子を見ているとバイナンスが米国で取引をするのは完全に不可能な状況に陥りそうです。

仮想通貨取引所の問題はそのまま仮想通貨自体の価格にも重大な影響を与える

BTCUSD一か月の動き Data Tradingview

バイナンスと創業者兼CEOのチャンポン・ジャオ氏が提訴されたことを受けて最も影響が出たのは仮想通貨自体の価格です。
今回のCFTCの訴状ではビットコイン、イーサリアム(ETH)、ライトコイン(LTC)、ステーブルコインのテザー(USDT)とバイナンスUSD(BUSD)は証券にあたるとされており、この報道を受けてビットコインはドルベースで一時2万7000ドルを割り込む展開となって直近では多少の戻りはありますが依然として低い価格で推移しています。
アルトコインへの影響も絶大で、イーサリアムは24時間で3.6%下落、バイナンスコイン(BNB)は5%以上下落し310ドル付近、ライトコイン(LTC)は 約4.8%下落しています。

この手の報道による相場の下落はそれなりの時間が経過することでもとに戻ることが多いですが、FTXの破綻からはじまって仮想通貨取引所の関連業界はかなりガタが来ており、主要な取引所がまともに機能しなくなると結局仮想通貨取引そのものが衰退する大きなきっかけとなるだけに、このままの状況が続くことは非常に相場にも影響を与えることが危惧されます。

結局ビットコイン市場の崩壊は取引所の問題に起因することになるのかといった悲観的な声も市場では聞かれるようになっています。
SBVの破綻で一旦は資金が流入して上昇したビットコインも価格は大きく下落することとなっており、仮想通貨全体の価格下落の影響がほかの資本市場にも広がりを見せることも心配されはじめています。

G7でも仮想通貨規制が厳しくなりそうな状況

今回のCFTCの提訴と前後する形になりますが、5月に広島市で開くG7の首脳会議においてG7が連帯し仮想通貨の規制推進に乗り出すとの報道も示現しています。
大手交換所の経営破綻などを踏まえ、世界各国で利用者が保護されるように法整備を促すのが大きな目的のようで、この分野では珍しく包括的な規制作りで国際的にリードしている日本が協議を主導することになる見込みです。

仮想通貨は世界的に利用が広がる半面規制が甘く、顧客の資産流用などで国境を越えて金融市場を揺るがす恐れがあるとの指摘は日に日に強まっており、既存の銀行の破綻を回避するために国を超えて仮想通貨に資金を移動するということもそう簡単にいかない可能性がではじめています。
特定国の金融当局の管轄下におかれないビットコインをはじめとした仮想通貨は、そうであるが故に特定国の金融機関で深刻な破綻等の影響がでた場合絶好の逃げ場として機能するはずでしたが、国を超えて同じ規制の枠組みが実施されるとともに資金移動が相当厳しく監視されるようになれば結局法定通貨の代替機能は完全に失われるだけに、この問題は仮想通貨取引所の問題経営をきっかけに相当大きなものに広がろうとしていることが見えてきます。