市場が注目した4月の米国・消費者物価指数(CPI、季節調整済み)は前年比の伸び率が4.9%と2年ぶりに5%を下回り、2021年4月以降で最小となりました。
事前の市場予測がほぼ当たった形になりましたが、この結果を受けてFRBが6月のFOMCで利上げを停止し、さらに年内に利下げに踏み込むのではないかといった期待が市場に広がることになり、米債金利は大幅に下落、ドル円もそれに合わせるように下落を続け11日の東京タイムではすでに134円を割り込む動きを見せています。
CPIは単月で判断できるようなものではなく、FRBが目標とする2%1には遥かに及ばないものの、市場は酷く前のめりで利上げ停止と利下げを織り込みはじめています。
ただし株式市場のほうは景気が悪化するスタグフレーションを気にする動きもではじめており、各資本市場ごとに指標を受けた反応がバラつき始めている点が気になるところです。
ここからはインフレに絡む指標が連日発表されるので、その結果に一喜一憂する相場がまだまだ続きそうな状況になってきています。
5月のFOMCではすでに6月以降利上げを一旦停止することを示唆するような声明内容も出ているので市場の期待が高まるのもわかりますが、さすがに年内利下げにまで辿りつくのかどうかはまだまだ判らないというのが正直な状況です。
米国バイデン大統領は共和党の議員と6月に迫っている債務上限問題について議論していますが不調に終わっており、この問題が解決しなければG7広島サミットも欠席する可能性を示唆しており、ドル円を取りまく情勢は決して良くない状況にあります。
その中でこうした経済指標が出てきていることから、6月にかけて一段ドル安円高が進むことも視野に入れた取引が必要になりそうな状況です。
6月FOMCの利上げ確率は10%以下に急低下
4月のCPIの結果を受けて6月のFedWatchはすでに9.6%と10%を割り込むところまで低下しており、市場参加者の9割以上がFRBは利上げを停止すると見込んでいることがわかります。
すでに5月のFOMC声明からも利上げを一旦止めることを示唆する内容を盛り込んでいるので、利上げ停止はほぼ間違いないものになると考えられますが、インフレは完全に沈静化した訳ではないので、先方に迫りはじめているリセッションや金融機関の破綻リスクを横目で睨みながらFRBがどのようにかじ取りしていくのかが非常に注目されることになってきています。
市場にはなんとしても利下げを期待する参加者が多数存在
昨年急激な利上げ政策をFRBが断行しはじめてからというもの、とにかく市場には早い段階で利上げを終息されることを期待する動きが強まりました。
今年の年初段階では3月まで利上げ終了で5月からは利下げに転じるといった見通しを立てる市場参加者が多かったことが思い出されますが、FRBの政策はそんなに短絡的なものではなく利上げ効果も6か月以上かけないと判断できないので、少なくとも年内は利下げは行われないのではないかというのが相場に精通した市場関係者の見方となっています。
米株相場に関してだと、利上げが停止されて高止まりの状態になるとかなり値を戻す時間が増えたのが過去の事例なので、まず利上げ停止するだけでも十分に市場に対する効果が発揮される可能性がありそうです。
ただ米債市場は利上げ停止だけで大きく金利が下がるかはかなり未知数で、その動きと相関性の高いドル円などは利上げ停止だけで大きくドル安にシフトするかどうかはかなり不透明感が漂うところです。
ドル全般はまだしも、ドル円に限ってだと本邦の貿易赤字は延々と続いて解消する気配はないので、実需ベースで円売りドル買いが続くことは避けられず、ここからはそう大きな動きにならない相場が続くことも意識してトレードをしていきたい時間が続きます。
この間に日銀が既存の政策を精査して政策変更を出してくるようなことになればかなり状況は変化することになりそうですが、劇的な相場や昨年のような明確なトレンドのある相場になるかは相当難しくなっていることを感じさせられます。
プロのアナリストでもここからドル円相場は緩やかに上昇すると見る向きと、どこかでドル安から円高にシフトすると見る向きが分かれているのが実情です。
したがってどちらに行ってもいいようフレキシブルに対応できるようなトレードを考えることが重要になりそうな期間が続くことを想定しておきたいところです。
それなりに難しい相場はまだまだ続きます。