米国における政治的な一大イベントである2024年の大統領選挙まで1年4か月あまりとなりましたが、バイデン政権は早くもこの選挙に向けて巧みな金融市場リード戦略を実施しようとしており、それに本邦の金融政策も大きな影響を受けそうな状況が見え始めています。
もちろんバイデン政権が金融市場を先導していくような戦略をとったからそれが間違いなく履行されるかなどは全くわかりませんが、足元でなにかにつけてバイデン政権のいいなりになっている本邦岸田政権の動きを見ていると大統領選挙までこの動きが延々と継続することは間違いなさそうで、巷で語られている植田日銀の政策変更など米国の高圧的な態度をみるにつけ全く可能性のないもののようにみえる状況となっています。
支持率の低いバイデンにとって米株市場の安定的上昇は必要不可欠なもの
米国FRBは7月に0.25%の利上げを実施するであろうことはすでに市場がすっかり折り込み済みとなっていますが、その後は追加利上げを中止することが期待されるようになってきています。
バイデン政権にとっては低支持率の中で辛うじて株価だけが大幅下落を免れているので、この状況を死守することは大統領選でも極めて重要な判断ということになります。
過去の利上げオペレーションのケースで言うと、利上げ停止から利下げまでの期間は米株も相応に上昇することが実績として記録されていますが、逆に景気悪化から利下げに転じた途端に相場は大崩れしたという過去の苦い事例もあり、FRBとしてはとにかくバイデン政権の強烈な要求に応じて2024年中は利下げを行わずに今の金利を継続することになるのではないかといった観測が高まっています。
一般的に中央銀行は政権とは独立した組織で金融政策を司るものと認識されていますが、実態はそうではなさそうであくまで現行政権の要望に応えることが必要になっているようです。
これは米国内の事情ですからさもありなんといった感じではありますが、バイデン政権はさらに日本に対しても厳しい注文を浴びせ始めているようです。
主要国が次々利上の中で日本だけは世界に流動性供給を要求するバイデン
G7をはじめとする主要国の中ですでに日本だけが利上げを行わない特異な中銀政策を堅持していることはご存じの通りですが、米国財務省はバイデン政権の意向を受けて日銀も今の緩和状態を2024年の大統領選挙終了まで堅持するように強く要求しているといいます。
現状の主要国の株高は日本が緩和継続により資金の流動性を提供しているからこそ実現しているものという認識は確かに間違っていないようで、ここから日本にも耐えられないようなインフレ状況が示現しはじめ利上げを余儀なくされると米株を含めて株式市場が大きく崩れる可能性があるだけに、バイデン政権としてはとにかく政策継続を相当声高に日本政府と日銀に迫っていることが窺われます。
これが事実であるならば7月末の日銀会合でのYCCの政策変更などが実現する可能性は皆無となりますが、市場はこの大きな食い違いを全く気にせず日銀が動くことを期待し続けるという不思議な状況を示現しています。
米国財務省は米株が上昇することは無条件にその状況を享受しようとしていますが、日本株に34年ぶりにバブル相場が示現しそれがインフレの引き金になって日銀の利上げを早めるということについても相当否定的な状況のようで、日経平均が34年ぶりに高値更新などという事態になった場合には自ら投機筋を動かして相場を大きく下落させる、もしくは本邦財務省による円買い介入実施を強要することで日経平均株価を一気に押し下げる戦略にでるのではないかといった相当ネガティブな観測も高まっています。
バイデン政権の大統領選を睨んだこの観測は見方によってはとてつもない陰謀論にも映るわけですが、ここからの日米金融当局の政策決定を見ていれば全くのでたらめか、かなりの事実なのかということは判断できそうです。
最悪の未来は米国が利下げに追い込まれ日本だけが遅れて利上げする事態
自国の利益の事だけを考えるとバイデン政権も相当勝手な要求を日本に突きつけて来ますが、将来的な金融政策の中でもっとも破滅的な状況に陥るケースがあるとすれば、米国が景気後退から利下げを余儀なくされる中で周回遅れの日本だけがそのタイミングでひとり利上げに転じる事態に追い込まれることで、これが図らずも現実のものになった時にはすさまじい円高とともに株式市場は暴落、債券利率は上昇し価格下落というとてつもない事態に陥る可能性が高まります。
そもそも国が市場に直接手を突っ込んで相場の上昇をけん引したり、下落を押しとどめるといった行為に及ぶことはすでにその時点で資本主義から逸脱しているわけですが、主要中銀が挙って過去にない緩和を実施し、それをなんとか巻き戻そうとしている現状では制御不能の事態が訪れても決しておかしくはなく、大統領選のために自らにもっとも有利な相場状況を実現しそれを維持するということが本当に実現できるのかどうかは首を傾げるものがあります。
まして米国の意向にしたがって独立した国のはずの日銀の政策がいろいろ制限されるという状況が許されるのかというのも大きな問題です。
各国の金融政策が政治によって大きな影響を受けるというのは本来大問題ですが、すでにそれが始まっている以上投資家としてはその理不尽の動きに巻き込まれて損を喫することがないように慎重に振舞うことが要求されていることを強く感じさせられる次第です。