3月の日銀政策決定会合を一週間後に控える中、市場ではマイナス金利の解除に加え、さらにイールドカーブコントロール(YCC)も撤廃されるのではないかという憶測が広がっています。
この憶測により、日経平均株価は月曜日のザラ場で1200円近く下落し、ドル円相場も146.500円を下値に取り込む展開となりました。
3月にマイナス金利政策が実施されればこのような反応が出ることは、多くの投資家が予測していたことですが、先週この二つの市場が予想外に下落したことは、日銀の事前リークによる影響なのかと、違和感を覚える状況となっています。
春闘の集中回答が予想通りなら相場は下落か
直近の報道によれば、3月13日に政府、経済界、労働団体の代表者による「政労使会議」が開催されることが明らかになりました。
この日は春闘の集中回答日であり、賃上げの動向を示す重要な節目となります。
もし日銀の期待に見合う引上げ率が示されれば、3月19日の政策決定会合でもマイナス金利が解除される可能性はさらに高まり、このタイミングで相場の下落が加速すると考えられます。
株式市場や為替市場におけるこの影響の程度は明確ではありませんが、日銀の緩和政策が続く中、年初からはドル円相場の円安がさらに進んだことで、海外投資家は割安感から日本株買いの動きが強まり、ついには日経平均株価が4万円を超える水準まで上昇する結果となりました。
市場では、現在の状況は一時的な調整売りに過ぎないとの見方もありますが、押し目とばかりに買ってみたら底が抜けたということはよくある話であるため、日銀会合まで気を抜かず慎重なトレードを心がけたいところです。
為替市場においては、下値で実需の買いが活発化しており、ズルズルと崩れてしまうようなことはなさそうですが、海外投機筋が東京タイムを中心に売り圧力を強めているため、この先140円台前半を試しに行く状況も考えられます。
マイナス金利解除をめぐる日銀と海外勢の認識にずれ
先日の日銀からのリーク報道を受け、海外投資家たちはマイナス金利の終了および解除を、完全な緩和政策の巻き戻しと見なしており、今後はフリーハンドに利上げが行われるとの解釈が進んでいます。
つまり、0.1%の利上げを行いマイナス金利は解除されるが、その後の利上げについては積極的ではないとする日銀の意向は、海外投資家には理解されていません。
また、イールドカーブコントロール(YCC)の撤廃や新たなルールの策定などの憶測が、さらなる緩和政策の巻き戻しと受け止められており、これが日本株の利確を加速させているものと見られています。
もしも19日までにYCCに関する情報がさらにリークされた場合、株式市場や為替市場も相応の下落に直面する可能性が考えられます。
具体的な下落の水準について断定することは難しい状況ですが、為替市場においてはここから5円~10円程度の円高に走るリスクを想定しておく必要がありそうです。
本来、円安の阻止は為替介入などの手段を用いずとも、日銀が政策変更を行えば簡単に実現することができるため、このような動きが起こることは当然であると言えます。
しかし、日本勢にとって3月の会合でここまで話が進展するということは意外な展開であるため、多くの個人投資家が日本株の売りに相当な失望感を抱いている状況です。
また、年度末の企業決算に関しては、できることなら3月末まで日経平均株価やドル円が高値で推移することが期待されており、日銀もそれに配慮してくれるのではないかとの期待が市場に広がっていましたが、現時点ではその可能性は限りなく低い状況です。
緩和政策の巻き戻しはいずれ訪れるものですが、3月の実施は予想以上に早い展開であると言えます。
進めざるを得ない3月のマイナス金利解除
現時点では、日銀関係者が3月にマイナス金利が解除される可能性が高いとの見方を示しているに過ぎず、日銀の正副総裁がそのような方針を明確に示しているわけではありません。
しかし、海外勢の約8割近くが政策変更を織り込んでしまっているため、日銀も実施せざるを得ない状況に陥っています。
ただし、政策変更内容が市場の期待よりも緩やかであった場合、失望感から一定の買い戻しが生じる可能性も考えられます。
また、もし3月も現状維持となり、政策変更が4月以降に先送りされた場合も、為替を中心に激しいドル円の買い戻しが発生する恐れがあるため、このようなシナリオも意識しておきたいところです。
米国では、FRBの前に高官が金融政策に関する発言を自粛するブラックアウト期間が設けられるため、市場への情報提供はかなり早い段階で制限されます。
一方の日銀は、3月16日まで発言自由とされており、事実上ブラックアウト期間は設けられていません。
年度末相場をめぐり、市場は予測困難な動きとなりますが、事前にいくつかのシナリオを準備し臨みたいところです。