年が明けてからようやく民主党主導で議会を通過させた1兆9000ドル超の米国バイデン政権の追加経済対策ですが、直近の報道ではさらに最大3兆ドル、日本円にして330兆円規模の長期経済プログラムのローンチも検討しているようで、大きな政府が民主党のトレードマーク的やり口としても2020年のトランプ政権からの財政出動から合算しますと900兆円近いバラまきが本当に適切なものなのかについては意見が分かれているようです。
増税しても財源のほとんどは赤字国債という危うさ
このさらなる莫大な経済プログラムの実施にあたってはバーニーサンダースやオカシオコルテスが従前から主張してきた大企業や富裕層への増税策が実施されることになるのは間違いのないところで、これだけとっても株価に影響を与えることになりそうですが、増税だけでは到底原資を確保することはできず、残りの殆どの部分はまた赤字国債のお世話にならざるを得ない状況です。
もはやバイデン政権はMMT理論の実践を始めているようにも見えるわけですが、これだけ短期的に債券を発行し市中にカネをバラまいてインフレがまったくおきない筈はありません。
市場が嫌気して米債買いを控えるようになればかなり短期で米10年債が2%超の金利に跳ね上がるリスクは相当高そうで、このプログラムが果たしていつローンチするのかは金融市場に相当大きな影響を及ぼしそうな状況になってきました。
米債金利はゆっくりとその利率が上昇した場合には意外に相場への影響は限定的になりそうですが、短期間に上昇が加速すると相当な影響がでそうで、当然のことながら為替への影響は深刻なものになる可能性があります。
仮にここからかなり短期に米10年債金利が2%超に跳ね上がった場合には、ドル円なら軽く110円を飛び越えて113円を超えるところまでいきなり上昇することは十分にありえそうで、ここからはバイデン政権の経済政策とそれを受けた米債金利の動向に相当注意が必要になりそうです。
FRBは金利上昇のリスクを敢えて放置している可能性も
インフレの到来と米債金利の上昇についてはFRBのパウエル議長も折に触れて言及するようになっていますが、一説によればわかっていてあえて無視するような動きにでることで市場が癇癪を起こしてある程度の下落がでたところで、それを言い訳にしてさらなる緩和に踏み切ることを画策しているのではないかといった穿った見方も出始めています。
たしかに現状ではこれ以上緩和を持ち出すにはなにか明確な大義名分が必要になることは素人でも見当のつくところですが、株式市場を中心にして過熱感のある相場が一旦冷やされて下落する局目では追加の緩和政策もうちやすくなるということでまさにそれを狙っているという指摘は一定の納得感のあるものとなっています。
いずれにしても株式相場はNASDAQを中心に下落が止まらない状況になっており、これが期末に伴うものなのかさらに大きく下げることになるのかはまだ判りませんが、どうも市場のセンチメントは微妙に変化しつつあるようです。
4月までは本来のシーズナルサイクルでいえば日米ともに株価は上昇しやすくなるものですが、今年に関してはサイクル通りには動いていないことが窺われ、果たしてここから値を戻すのかそのまま下落するかはまさに米債金利次第の状況になってきていることがわかります。
バイデン政権のさらなる経済プログラムのローンチが逆に相場を大きく圧迫することにならないことを願いたいところです。