米国労働省が9月3日に発表した8月雇用統計の結果は市場予測に比べ非農業部門雇用者数が前月比23万5000人増と、市場予想の72万8000人を大幅に下回り過去7か月でも最も低い伸びを記録して、ドル円は下落しました。

この日のNYタイムに期限を迎える15億ドル弱の大きなオプションがあったことから、発表後下げた相場は110円に戻る動きになりましたが、週明け月曜日のレイバーデーによる三連休も控え最後は109円台中盤に値を下げて一週間の取引を終えています。

日本はこの日の昼に菅首相が総裁選出馬しないことがニュースで流れたことから雇用統計が若干霞み、ニューヨークでは未曾有の大洪水があったので、米株は反落しましたが為替は大きな動きにはならずに終わっています。

Data Bloomberg

業界によって状況にはかなりバラツキが発生

アナリストのNFPに関する事前予測の平均値と速報で飛び出してくる数値とに乖離が起きても1000万人と1万人といった極端な数字でない限りは誤差の範囲内で、8月の夏休みシーズンということを考えた場合さらに9月、10月分の統計結果を待つ必要があります。

雇用者数の内訳としては、全般的にサービス業が総じて弱くレジャー・接客の伸びが0となったほか、レストラン・バーは4万2000人減少、ホテル・モーテルは3万4600人減、小売りも2万9000人減った形で、コロナから経済が回復したように見えた6月あたりとはやはり異なることが分かります。

ただ減少が顕著なのは飲食などのサービス業で今後コロナさえ抑えられれば比較的短期に雇用が期待されます。

建設は3000人減でやはり一時的にサービス業と同様の状況のようです。

一方、芸術・娯楽・レクリエーションは3万6000人増加、専門職・企業サービスや運輸・倉庫も伸びており一部回復しているセクターも見られるようになっています。

製造業はいち早く回復して3万7000人増加となり、このうち自動車関連が2万4100人増加していることが目立ちます。

この結果を受けてバイデン大統領は引き続きデルタ株の影響が労働市場に影響を与えていることは認めていますが、経済は着実に回復しているとも指摘をしており、先行きに不安は持っていないことが分かります。

FRBのテーパリング実施はやはり9月10月分の雇用統計を見て決定の可能性

市場では経済データが良好なものになるとテーパリング早期実施とはやし立てる投資家がいて、それに米債金利とドル円の動きが巻き取られることが多いです。

しかし今回の雇用統計の結果を見ると、9月に失業給付金の上乗せが切れたタイミングで多くの労働者が労働市場にすんなり復帰するのかどうか正確に見極める必要があり、向こう2か月の結果次第ではテーパリングの実施がさらに遅れる可能性もあるでしょう。

ただ一般的な見方として、一旦多額の給付金が支給されてしまうと国民はさらに多くの給付を要求する可能性があり、特にデルタ株の感染がここから年末に向けて急拡大するような事態になれば、バイデン政権も2022年の中間選挙に向けてさらに給付金を支給せざるを得ない状況になることも考えられ、市場が想定しているほどテーパリング利上げも簡単なことではなくなるかもしれません。

実際6月ごろまでは米国内でのワクチン接種が非常に進んだことから、完全にコロナの問題は終息方向に向かう見方があり金融市場はすでにコロナをテーマとしなくなってきたのですが、ここへ来てまたコロナの問題が見え始め、特にワクチンが効かない変異株がまん延した場合には改めて金融市場にネガティブなインパクトをもたらすリスクがあることを視野に入れた方がいいでしょう。