1月のFOMCを受けて株式市場は米株相場はかなりの乱高下を続けることとなり、日本株もその煽りを受けることとなりました。

しかしその後、FRBのメンバーである地区連銀の総裁たちは米経済を不必要に混乱させたくないと述べ、急激な利上げが行われないことをしきりに口にして市場とのコミュニケーションを進めようとしています。

また市場が予め織り込んでいた3月の0.5%の利上げを否定する地区連銀総裁も非常に多くなっており、インフレ対策の利上げながら株式市場に大きな影響がでないように配慮を始めていることが窺われます。

バイデン政権は今年11月に中間選挙を迎えますから、支持率の低い中で無闇に株価が大幅下落するのは避けたいはずで、それがFRBに大きな足かせとなりつつあるようです。

ただ、株価の維持とインフレ対策が本当に両立できるのかどうかは誰にも分らず、今年は本当に順調に利上げでいるのかといった懐疑的な声も市場では聞かれるようになってきています。

タカ派色の強い存在もしきりにハト派的展開を示唆

FRBメンバーの中ではかなりのタカ派的存在であるカンザスシティー連銀のジョージ総裁は、エコノミック・クラブ・オブ・インディアナが主催したイベントで「経済では常に、徐々に進めることが望まれる。予想外の調整で経済を混乱させようとしても誰の利益にもならない。」と異例な慎重姿勢を打ち出しています。

もともとハト派で知られるサンフランシスコ連銀のデーリー総裁は、3月にも利上げの可能性はあるとしながらも、当局はビハインドザカーブ、つまり後手に回ってはいないとし、新型コロナウイルスの長引くパンデミックなど経済が直面するリスクに言及しながら急激な利上げが行われないことを示唆しています。

アトランタ連銀のボスティック総裁はヤフー・ファイナンスに対し、年内3回の利上げが自身の予想だと述べていますが、やはり3月の0.5ポイントの利上げは支持しないと発言して性急な市場の利上げ織り込みを否定する見解を口にしています。

株価は落ち着いたが果たして利上げげインフレ対策はできるのか

リーマンショックで相場が大暴落して以来、FRBの仕事は人工的に株価を値付けして引き上げることが大きな仕事になってしまったように見えます。

しかし中央銀行に求められるのは株価を高止まりさせることではなく、やはりインフレファイターとして物価の上昇に一義的に対応することであり、ここのところのFRBメンバーの株価第一主義にも見えるハト派的発言で本当にインフレに対峙していけるのかどうかが非常に危惧される状況になってきています。

米国の物価上昇はオフィシャルな数字でもすでに年率ベースで7%に及んでおり、過去の算定基準から考えればもっとインフレは進んでいるという指摘もあります。

しかし株価の推移だけに気をとられて利上げやFRBの資産縮小などに尻込みするような事態に陥った場合にはインフレを制御することなどできず、結果的に株価さえ下落しかねない状況になることも予想されるだけにここからのFRBの政策決定については注意が必要になりそうです。

ECBや日銀も利上げに動かざるを得なくなると中央銀行バブルは完全終焉

ただ、我々市場参加者はここまで主要国の中銀が金融緩和を行い市中に資金が大量に撒かれた状態を過去に目の当たりにした経験はなく、ここから緩和の巻き戻し、利上げ、中銀保有資産の売却などが進めれられた場合に金融市場が本当に一定の耐性をもって相場を維持できるのかどうかは誰にも判らないところにさしかかっています。

相場は参加者のセンチメントの急激な変化で起きるものともいえますから、一斉に参加者が出口に殺到しはじめれば大きく下落することが容易に予想できるところです。

また債券、株、不動産といったすべての領域で過剰なバブルが起きているのは人類史上初の出来事でもありますから、一気に崩壊した場合には全く経験したことのないような状況に遭遇する可能性もありそうで、引き続きFRBを中心とした政策動向には十分注視する必要がありそうです。