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国連では米露がウクライナを巡って猛烈な罵り合いを行っていますが、国連は加盟国に五輪開催期間中の戦争を回避するように強く働きかけています。

ロシアのプーチン大統領も北京五輪の開会式に参加することが確定していますからこのタイミングに10万のロシア軍がウクライナにいきなり侵攻したり戦闘の結果一部地域を占領するといった悲惨な事態が起きることは多少後退している感があります。

それを受けてかスイスフラン買いも一旦は落ち着きを見せています。

ただ、それでロシアのウクライナ侵攻が回避されると見ている向きは少なく地政学リスクは依然として高いまま推移しているのが現実です。

ロシアがウクライナ侵攻をはじめるとEUも米国もあくまで制裁から動く可能性

ウクライナはNATO加盟国ではありませんから何等かの武力衝突があるとすればまずは14.5万人いると言われるウクライナ軍とロシア軍が直接的に戦闘するところからはじまることが予想されます。

ほとんどの兵器類は旧ソ連製やロシア製のものであることから本当に最新兵器を駆使したロシア軍と互角に戦うことができるのかどうかにはかなりの不安が残るようです。

この段階ではNATO軍も米軍も戦闘に参加することはどうやらなさそうで、ロシアが侵攻を開始すれば米英が協力して別のレベルでロシアに制裁を行うことが現実のものとなりそうです。

現在米国より示唆され始めているのがSWIFTからのロシアの利用締め出しで、これが現実のものになりますと外貨の獲得が一切できなくなる状況に陥り、双方のリアルな戦闘以外の領域での制裁合戦は想像を絶する世界に陥るリスクが高まります。

SWIFTからのロシア締め出しは相当なダメージを与えることに

SWIFTという名称はご存じの方も多いと思いますが、我々個人が海外送金する場合でも取引銀行のSWIFTコードを求められますが、まさにそのSWIFTのことで国際銀行間通信協会の略号を示すものです。

現状では世界の1万1000行以上の金融機関で利用されている最大かつ唯一無二の国際送金手段ですから、ロシア経済はこの使用をいきなり止められただけで即座に5%以上の縮小を余儀なくされるとみられています。

SWIFTがこのような政治的な制裁に使われたことがあったのかどうかは非常に気になるところですが、実際2012年にSWIFTはイラン制裁のためにイランの銀行を完全排除した実績があり当時イランは石油輸出収入のほぼ半分を失うとともに貿易全体でも3割を失うという相当なダメージを食らっています。

ロシアは2014年のクリミア半島併合後に西側諸国から相当な制裁を受けた経験があることから今では独自の決済システムを立ち上げているようですが、現状ではその利用は400行程度に留まっており、中国の国際銀行間決済システム(CIPS)に依存する可能性もありそうですが、当座はSWIFTからの締め出し制裁でロシアルーブルの大暴落やロシア企業のデフォルトなどが続発する危険も高まることになります。

しかもこれは単にロシア自体に大きな影響を及ぼすだけでなく原油や天然ガスでロシアと取引する買い手の企業も一切取引ができなくなることを意味しており、主要な取引先である欧州企業にもかなり大きな痛手を負わせることが予想されています。

足もとでロシアの銀行をSWIFT経由でやり取りをしているのは米国とドイツの金融機関が圧倒的に多く、この締め出しは少なからず米国とドイツに影響を与える、ある種の身を切る制裁となることは間違いなさそうです。

露中が結託して米債売りに廻れば米国金融市場も大きな痛手になる可能性も

米英の戦略ではロシアだけを完全に経済的に封じ込めるようなプランになっていますが、逆に露中が結託し強烈な対米の反撃に転じて外貨準備からドル保有を一気に減らすとなった場合にもっとも危惧されるのは米債の売り浴びせで、米国政府がそれを物理的に抑制するようなことになればそれは完全に金融市場を舞台にした大戦争に発展しかねないことが想定されます。

米債の下落、金利の大幅上昇は足もとで進められようとしているFRBによる利上げにも多大な影響を与えますし、これに起因して株式相場が大暴落する引き金をひく危険性さえ高まることになります。

そうなれば今年後半の米国の中間選挙は民主党の大敗でバイデンはいきなりレイムダック化し大統領続行不能という不測の事態にまで進展する可能性も排除できない状況で、金融市場を巻き込む制裁、報復合戦のエスカレートは相場に予想外の大きなリスクを持ち込むことになることはしっかり理解しておく必要がありそうです。