すでに5月相場に突入しましたが、3月、4月と為替市場ではドル円相場が数年に一度の大相場に突入しており、海外投機筋をはじめとして通常ではドル円の取引を積極的に行ってこなかった向きもこの期間に大量に参入し、驚くほどの大きな資金のフローがではじめています。

結果として3月初旬からすでに16円近く相場は上昇しており、年初につけた116.300円を起点にしても15円の上昇を遂げており、猛烈な大相場になっていることが判ります。

国内の個人投資家はほぼ7割近くがドル円のトレードでFXを勝負していると思われますが、こうした上昇の大相場を体験した人はほとんどいないはずなので、ここ10年の相場の動きによる経験だけで大相場に対応してかなりの人たちが想像を絶する負け方をしていると聞きました。
今回はこうしたドル円の大相場をどう乗り切るべきなのかについてまとめてみることにいたします。

2016年1月末から半年近く下げの大相場が存在した

過去10年あまりドル円は年間の値幅はせいぜい10円という年が非常に多く、あまり大きく動かないが故にレンジでの逆張り取引がワークする通貨ペアという印象が個人投資家に非常に強く浸透してしまいました。
しかしよく調べてみるとかなり大きく動いた年もあり、それが2016年の1月末から6月にかけての相場でした。

2016年1月から6月の相場 赤の囲み部分

この年1月末の日銀政策決定会合で銀行が預け入れる日銀の当座預金金利がマイナス0.1%となったことから、発表当初は一旦上昇したはずのドル円でしたが本邦銀行の経営悪化懸念から経済にも悪影響がでるのではないかというネガティブな見通しが広がって株価が大きく下落することなり、ドル円もそれについて122円レベルから3月末で107円近くまで下落することとなりました。

今回の上昇大相場の全く逆さまで下落の大相場となったわけです。
この時も投機筋が大挙して市場に参入して非常の大きな資金のフローをベースにしてドル円は徹底下落の軌道を6月まで走り続けることとなりました。

この年の6月、さらに極めつけになったのが英国のBREXIT投票で、当初はBREXIT回避のはずが一転して成立となったことから、107円台まで戻していたドル円はなんと98.5円と100円割れまで下落するおまけつきになってしまいました。

この年は異例の展開が続き年の後半はトランプが大統領に当選したことでドル円は暴騰、118円台まで値を戻すという怒涛の展開になっています。

例年の相場の値幅を大幅に超えている特殊相場であるということに注意

例年値幅が10円程度から大きくても13円程度ということもあって、ドル円をトレードする本邦の個人投資家は上昇局面では自らのレベル感で逆張りをするケースが非常に増えており、まず125円レベルで売って担がれ、128円あたり、130円でも一旦は止まると思って売った向きが激しく担ぎ上げられて、結局損切を余儀なくされることが激増しているといいます。

131.200円レベルまで上昇したドル円は、結果的には月末のリバランスで129.300円近くまで4月30日のロンドンフィキシングで下落することとなりましたが、激しい上昇に見舞われているときにはさらに上値を追いかねない恐怖心との戦いになるので、結局損切を決断し損失だけが残るという最悪の結果となってしまいます。

3月末から4月末にかけてこうした逆張りの売りトレーダーが徹底的にあぶりだされてしまったようで、過去の経験値からのトレードが大損失を招いていることがわかります。

こうした大相場では通常の値幅も通用せず、大きな資金のフローが想定をはるかに超える上昇を示現する可能性が相当高くなるため、何かの拍子に下落を余儀なくされるリスクは残ってもやはりトレンドフォローで今回ならロングで利益をとっていくことに専念する必要があることが分かります。

一定の上昇を果たしたドル円は5月に一旦下押しする可能性は十分ありそうですが、上昇トレンドが切れていない以上売りよりも買いでトレンドについていくという習慣をつけることが非常に重要になりそうな時間帯です。

ここからはドル円の値幅も劇的に変化する可能性

今回のようなドル円の水準の大幅な変化が現れるとここから先も大きな水準訂正が起きる可能性が高まります。
これまでなら105円から115円ぐらいの値幅で年間推移したドル円がもはや120円、もしくは125円から上限135円、150円といってレベルに完全に水準訂正となることも視野に入れる必要があるということです。

こうした大相場に参入してくる投機筋は凄まじく大きな資金とともに相場に入り込んでくるので、そもそも個人投資家が日々確認しているテクニカル分析のセオリーなどは完全無視して上昇を狙ってくることになり、テクニカル主体でトレードを行う人たちは十分に補正をして臨むことが必要です。

ドル円の大相場はすでに2か月続いていますが、上述の2016年の下落のケースなどをみると4か月以上継続したという実績もあり、ここから6月末頃まで続くことも想定しておくべき状況です。

ドル円市場は日米の金融政策差というファンダメンタルズをベースに圧倒的な動きを続けており、テクニカルがワークしなくなりつつあります。
過去の平時の経験だけから先行きを見るのは非常に危険であることを肝に銘じるべき時間帯がやってきたと言えるでしょう。