7月5日のロンドンタイムに入るや否やユーロが対ドルで下落、対円でも大きく値を下げる展開となりました。
5日の海外市場でドルに対しおよそ20年ぶりの安値を付け、日本時間6日夕方には1ユーロ=1.022ドル台に一段安となり、パリティ、つまり1ユーロ1ドルとなるのも時間の問題になりつつあります。
このいきなりの下落には様々な理由が語られ始めていますが、投機筋が狙い撃ちすることでユーロドルが大幅にドル高になった可能性が高く、まだこの下落は続きそうな状況です。

ここ4か月近く、為替市場は円安が大きなテーマになってきましたが、ここからはユーロ売りにテーマが変更しそうな状態です。
ドル円の円安も24年ぶりという非常に長い期間ご無沙汰だったレベルで推移していますが、ユーロドルのこの下落も実に20年ぶりということになり、本邦の個人投資家がFX取引を始めた2004年よりもさらに2年以上前の出来事であるため、過去のチャートにも現れない水準となっています。

Data Tradingview

上のチャートを見ると、2000年から2001年頃にパリティを割り込んでいた時期もあるだけに、今回の下落がそこまで到達するのかに市場の大きな関心が注がれ始めています。

欧州圏のユーロ安材料は盛り沢山

ウクライナ戦争の長期化で欧州のエネルギー危機は深刻化が進み、ドイツへの供給が完全にストップする恐れもあり、この冬ドイツは燃料配給制になるとの噂まで経つほど大きな問題になってきています。
ノルウェーの石油ガス労働者大規模ストライキは政府が介入することで事なきを得ていますが油断は禁物です。
また、ドイツのガス料金は3倍に跳ね上がり、この部分だけとっても欧州圏のインフレは凄まじいものになりつつあります。

ただECBはそれに対して大きな利上げを行おうとしておらず、そこには地域通貨となっているユーロの複雑な状況が絡んでいることが垣間見えてきます。
急速な利上げの実施はイタリア、スペイン、ポルトガル、ギリシャなど、もともと経済が脆弱な国々を相当痛めつけることになるのでどうしてもためらう動きとなりますが、それでは欧州圏全体のインフレを制御することはできないだけに、ECBにとってはかなり頭の痛い状況が顕在化してきています。

また、欧州圏をけん引してきたドイツ経済もここへ来てかなり弱含みの状況が続いており、域内の強い国が弱小国を助ける構図すら見えなくなってきています。
ただ、それゆえにインフレを放置しておけばさらに経済は悪化、株価も大きく下落し予想をはるかに超えた悲惨な状況が示現するリスクも高まることから、ユーロにとっては値を戻す支援材料はほとんどなくなっていることがわかります。

ユーロのパリティ割れでドル円も140円達成か


ドルインデックスを見てみると、さすがに6割近くがユーロドルの動きを取り込んでいるだけあって、すでにここ10年でもっとも高い106.800を超え始め、さらに上昇しそうな状況になっています。
このままでいけば今月のかなり早いタイミングでユーロドルがパリティを超えそうで、こうなるとドル円が連動して140円方向に押し上げられる可能性も考えておく必要が出始めます。これまでドル円はまさにドルと円との関係だけで先行きを予測してきましたが、そこにユーロの大幅安が加わったことでドル円の上昇が思わぬ材料で加速する危険性が高まりつつあることがわかります。

米債金利は6月末から一転して下げに転じる時間帯が長くなりましたが、投機筋の投げが出たために一時的に下げただけで、ここからはまた上昇軌道に回帰するといった見方も強まっています。
こうなるとドル独歩高がまだまだ続きそうで、ユーロドルはパリティを超えてどこまで下げるのか、逆にドル円は140円を突き抜けてどこまで上昇するのかが非常に大きな注目点となりそうです。

為替は各国通貨の相対的なやり取り関係で決まるものなので、今回のようにいきなりユーロが大幅下落すると他の通貨にも凄まじい影響がでることになりますが、とくに世界の主要通貨であるユーロでそうしたことが巻き起こると、想定をはるかに超えた相場の混乱が進むことをあらかじめ意識しておく必要がありそうです。

ここからの7月相場は相当波乱の展開になることだけは覚悟しておく必要があるでしょう。