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クレディ・スイス・グループは9月26日に、来る10月27日の7~9月決算発表時に資産・事業売却を公表することを検討していることを明らかにしたあたりから株価が下落しはじめ、ネットでは週末でも同社の破綻を危惧する声が高まりを見せています。

同社のウルリッヒ・ケルナーCEOは9月30日従業員に対し、同行の「資本ベースや流動性の状況は力強い」と述べ、新たな戦略計画を10月27日に発表するまで行員には最新情報を定期的に報告すると伝えています。
しかし株式市場では同社株は上場来安値を更新、CDS市場では同行の社債保証コストが約15%上昇して2009年以来の高水準を維持しつつあり、状況は決していいものではありません。

2008年のリーマンショックを知るものにとってCEO発言は信用できないものがあり、2008年9月初旬にリーマンのCEOが十分な資金力があるから心配することはないと市場に語り掛けた後、1週間でお取り潰しになった過去が奇しくも蘇る状況になりつつあります。
株価の劇的な下落に加え、CDSの上昇は間違いなく市場がくクレディスイスを相当危惧していることがはっきりわかります。

Data Bloomberg
Data Zerohedge

BOEがスイス当局と協議のために連絡をとっているとの話も

金融機関の破綻話は噂が先行しがちで、どこまでが真実なのかを見極めるのは難しいのが現実ですが、クレディスイスのここまでの対応が金融システムリスク懸念をあおったのは間違いなく、自国の金融政策の大幅巻き戻しで先週話題になったBOEはすでにスイスの金融当局と連絡を取り合い、対応を協議し始めるという報道が出始めています。
市場は常に米国の相場を見てきていましたが、ここへ来て欧州の金融市場のリスクが非常に高まっていることが明確になりつつあり、我々個人投資家もその領域に目を向けざるを得ない状況が続きそうです。

スイスの金融当局は自国の代表的金融機関であるクレディスイスをどこまで救済するつもりがあるのかも非常に大きな注目点で、やり方を間違うとさらに大きなダメージが市場にもたらされることになりかねないため、個々からの動きに大きな関心が集まるでしょう。

専門家の見立てではクレディスイスのバランスシートを見る限りそれほど危機的な状況ではないという見解も出始めていますが、2008年のリーマンショック時では保険業界のAIGなどは本体よりも子会社のほうに問題を抱えており、それが見事に炸裂したことが思い出されます。
クレディスイスについてもそうした部分を精査しないと本当のことはわからないのが実情です。

欧州市場起因でのクラッシュは十分に考えられる状況に

ここのところ欧州市場では続々と危ない話が飛び出してきています。

たとえば北欧の電力会社がエネルギー価格が高騰しすぎてヘッジで売っているデリバティブのポジションにマージンコールがかかり国が資金を保証するという事態も起きており、同様の状況はドイツでも顕在化し、結局ドイツ当局は天然ガス調達コストの膨張で資金繰りが急速に悪化したエネルギー大手ユニパーの国有化に踏み切っています。
また直近では英国債が暴落したことから、年金すらもマージンコールを抱えるという非常事態に陥り慌てたBOEが緩和の再開を発表するといった状況に追い込まれるなど、これまで欧州市場では見られなかったようなことが次々と現れるようになっており、ここだけとっても相当リスクの高い状況に陥っていることがわかります。

クレディスイスになにかがあった場合最も心配されるのはドイツ銀行で、当然のように欧州圏の他の銀行に波及するリスクも高まることになります。
週明けからクレディスイスに関してはさらに様々な情報がでて市場が先行して荒れる相場になる可能性は高そうですが、相場は常にこうした状況を織り込みに行こうとするため、同社の株価がさらに下がりパニック状態が示現することもある程度覚悟しておかなくてはならない時間帯に入っています。

この冬に向けて欧州経済は一段と冷え込みそうで、インフレとリセッションが同時に到来するスタグフレーションの時期を迎えるのは時間の問題になりつつあります。
そこに広範な金融危機が襲った場合世界中に波及するリスクはかなり高まることから、ここからの相場では欧州市場の動向から目が離せないものになるでしょう。