先週11月6日日曜日からのたった一週間で仮想通貨クラスタ、とりわけ仮想通貨取引所には大きな変化と試練が訪れることになりました。
ややもすれば状況を正確に把握できないほど様々なことが矢継ぎ早に起こっており、今もその動きは継続中です。
こうした動きは仮想通貨クラスタの中だけで起こっていると認識されがちですが、実は金融市場全般に大きな影響を及ぼす可能性がかなり高いことから、見過ごすわけにはいかない状況になりつつあります。
一体この一週間で何が起きてしまったのでしょうか。

バイナンスのFTT売却からはじまり週末とうとうFXT破綻・CEO辞任、資金流出という怒涛の展開

Photo Coindesk

事態が動きはじめたのは11月6日日曜日のことで、FTXの競争相手であるバイナンスのCEOチャンポン・ジャオ氏、通称CZが手持ちのFTTを全額売却すると言い出したところから始まりました。
結果的にはこれがFTXからの大規模な資産流出を早めることになりますが、市場が驚くことになったのがその後の8日そのバイナンスが競合であるFTX買収を基本合意したと発表したことで、そんなにいとも簡単に同業者を買収するのかということに市場参加者は一様に驚かされることになりました。
ただこの話はここでは終わらず、9日にバイナンスが一転して事業買収を撤回する旨を発表したことから相場はさらに危険な方向に動くことになります。

恐らくまともにデューデリジェンスもしていない中で買収を発表したものの、よく検討してみたら自分たちの手に負えるような負債総額ではないことに気づき、一転して買収撤回宣言となったのでしょう。
この報道を聞いた投資家はFTXから資金を取り出すために躍起になり、取付騒ぎがネットで起こることになります。
しかしこの時点でNTXは流動性を維持するために1.1兆円程度の資金が枯渇していることを表明し、事実上投資家は資金を取りだすことができない状況に陥ります。

ただ、11月10日には米国の月次CPIが多少緩んでインフレがピークアウトしたのではないかといった市場の期待が高まったことから米株は暴騰、債券金利も大幅低下、ドル円は下落したことから仮想通貨の下落も一旦は落ち着き値を戻す展開になりました。
しかしそんな気休めの時間は長く続かず、翌日にはビットコインをはじめアルトコインも再度大きく値を下げることになり、週末11日にはFTXは破綻し関連会社130社を含めて日本の民事再生法に相当する米連邦破産法11条(チャプター11)の適用を正式申請をするに至り、CEOのサムバンクマンフリード、通称SBFは辞任を表明しています。

この一週間でSBFもほぼ160億ドルの資産を失ったとされていますが、実際にはどうなのかが気になるところです。

これで仮想通貨全般が大きく値を下げたのは当然の成り行きでしたが、さらに問題になっているのは11日の夜、FTXに関連する複数のウォレットアドレスが公式通知なしに数百万ドル相当の仮想通貨を不正送金しているのが見つかり、FTXもそれを認めています。
これが外部からのハッキングなのか内部のものによる資金逃避なのかは正確にはよくわかりませんが、多くのFTXの口座ホルダーはウォレットにいれた資金がゼロになっているのを既に確認しています。
FTXサイドはトロイの木馬をダウンロードする可能性があるためFTXのサイトにはアクセスせず、アプリも削除するようにと公式テレグラムで警告していますが、現段階では外部からのハッキングなのか内部の人間が資金を持ち出ししているかわからないという疑心暗鬼の状態が続いている状況です。

根底にあるのは杜撰な資金管理と安易な仲間内の投資

FXTの問題は週開けもまだまだ続きそうな状況ですが、利益を獲得して急成長してきたかに見えたFXTの内側は相当脆弱かつ金融機関の一角を担うものとしての統制が全く取れていなかったようで、ボロボロの内容がすでに露見し始めています。
仮想通貨取引所業界は以前から保有仮想通貨のマネタイズを目指し、仮想通貨を使ったレンディングビジネスいわゆる貸金業も行ってきていますが、まずこれがどこもうまくいっておらず資金を減らす元凶になってしまったようです。

FTXでも同様でSBFが個人で所有してきた投資会社アラメダリサーチも同様の事業を行っており、今年5月と6月に経営破綻した暗号資産融資業者ボイジャー・デジタルへの5億ドルのローン契約で損失を食らったこともこのアラメダリサーチの損失を大きくしています。
さらにそこで大きな問題となるのが143億ドル以上と言われたにも関わらずみるみるうちに資金が減少したアラメダリサーチに対し、個人の一存で会社の経営会議にもはからないまま勝手に40億ドルの資金を移管してしまったことです。

この資金は株式取引プラットフォーム、ロビンフッド・マーケッツ株式やFTXのトークン(FTT)などの資産を担保にしたもので、さらにFXTに預け入れをした個人の資産も信託保全で別管理すべきところを勝手に流用したもので、およそ金融機関の体裁を整えていないことが露見してしまいました。

ここから個人投資家の資金引き出しと取引所の信用収縮が最大の問題に

週開けもFXTを巡るドタバタの展開は続くことになると思われますが、最大の問題は仮想通貨取引所が米国でも連邦預金保険公社・FDICに加盟する銀行のようには預金者保護が図られていないことから、他の取引所でもFXTと同様の取付騒ぎが起きる可能性は高く、取引所全般で信用収縮が進んだ場合流動性資金がいきなり枯渇して仮想通貨クラスタ発のリーマンショック的な状況が示現することが危惧されます。

足もとの金融市場は横に連携しているので、例え仮想通貨取引所のクラスタで重大な問題が起きてもその中で留まらずに必ずほかの金融市場に影響が出ることが予想されます。
そういう意味ではここからFXT関連の問題がどのように展開していくかは慎重に見守る必要があり、日頃仮想通貨および仮想通貨FXをトレードされない方も注意深くここからの動向を見守る必要があります。