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11月6日、市場ではウクライナとの国境に近いポーランド東部の農場に2発のミサイルまたはロケット弾が着弾し、2人が死亡という報道により大きな緊張が走ることとなりました。
今年2月後半からいきなり始まったロシアのウクライナ侵攻でNATO加盟国に戦争の被害が出たのはこれが初めてとなり、NATOがどう動くことになるのかを市場は注目し一時的にかなりのリスクオフの動きも示現することとなりました。

このコラムでもすでにご紹介しましたが、世界最大のヘッジファンドのCEOだったレイダリオがLinkdInに原稿を公開したように、いよいよ世界は戦争フェーズに突入することを強く意識させられる状況となってしまいました。
この報道にいち早く対応して発言したのがウクライナの現職大統領であるゼレンスキーで、ポーランドに着弾したミサイルがロシア軍によるものと一貫して主張を繰り返すこととなりました。
このウクライナとロシアの戦争状態にNATO軍が参戦するようなことになればかなりの大ごととなり、とくに図らずも双方で大陸間弾道弾ミサイルの撃ち合いのようなことになれば開戦からたった4時間で5000万から7000万の人々が死傷し、米国がさらに参加することになれば本格的な第3次世界大戦が勃発しかねない状況となるので、事態は我々が想像する以上に緊迫したものとなったようです。

折しもバリ島でG20会議が開かれてる最中だったので、NATOに関連する主要国が早速会議を開催することとなりましたが、事態は意外な方向に進むこととなりました。

米国が示唆したロシア関与否定論で一旦緊張事態は終息、市場のリスクオフも解消

このクリティカルな状況を真っ先に注意したのは米国でオースティン米国防長官は16日、ウクライナ国境に近いポーランド東部でのロシア製ミサイル着弾はロシア軍による意図的な攻撃ではないとの見方を示し、バイデン大統領も同様の見解を口にしたことから状況は一転、当初はロシア実行説を示唆していたポーランドのドゥダ大統領が故意の攻撃だったことを示すものは何もないという発言をしたことから、NATO軍を絡めた西側陣営とロシアの全面戦争に発展する危機はなんとか収められることとなった次第です。

ただ、ゼレンスキー大統領はこのミサイルはウクライナ軍の分析に基づく判断からロシアのミサイルであることを疑っていないとしており、ウクライナが迎撃のために発射した地対空ミサイルの可能性が高いとする西側諸国の見方にも反発しています。
当初ゼレンスキーはポーランドがNATO加盟国であることから集団安全保障に対するロシアのミサイル攻撃であるとして、NATOに行動を求める煽りの発言をしましたがロシアが即座に否定し、米国もその可能性が低いとしたことからなんどか大事に至らずに済むこととなったものです。

ゼレンスキーの立場ならこうした動きに出ることは十分想定できるところですが、それによって巻き込まれる世界は非常に大きなものがあり、緊張は高まるばかりです。
ロシアが一方的にウクライナに侵攻したのは紛れもない事実であり、すでに9か月近くが経過してかなりの犠牲者がウクライナ国内で発生しているのもまた事実ですが、戦況を変えるという目的でNATO軍の参加を煽るゼレンスキーにはかなり危ない存在であることを感じさせられるものがあります。

ウクライナには戦争絡みで様々な問題も浮上中

ロシアのウクライナ侵攻に関してウクライナの主張が圧倒的に正しいと支持する人々が世界に溢れているのは事実ですが、足もとではこの戦争絡みで深刻な問題が起き始めています。

まずこの9か月間で西側主要国から無償で提供されている最新の武器や兵器のかなりの数がすでに転売されておりアフリカ、中東、イスラム圏など、周辺のかなり危ない国の最新武装化に貢献してしまっているという話が西側メディアでも頻繁に取り上げられ始めています。
実際今年7月ウクライナ経済安全保障局のワジム・メリニク長官もそのような事態が起きていることは正式に認めており、現在刑事事件として犯人を立件する方針で動いていることを明らかにしています。
しかし実際問題どれだけの兵器が横流しされてしまったのかは正確には分からず、しかも戦闘は延々と現場で継続しているため、転売ボリュームを正確に掌握するのはほとんど無理な状況が続いているようです。

また、直近では先週破綻となったFTXが行っていたウクライナへの仮想通貨によるドネーションというスキームを逆利用して、FTXはウクライナと米国民主党とのマネーロンダリングに加担し、裏金工作を担当していたのではないかといった驚くべき疑惑も顕在化しはじめています。
米民主党バイデン政権によるウクライナ支援金をウクライナ政府がFTXでクリプト購入し、米民主党の選対本部に送った結果裏金となるというのは十分にありえる話であり、現状では陰謀論の域を出ない状況ではありますが、元からウクライナに深く関与するバイデンならありえない話ではないという見方も強まっています。
今や戦争の真っ只中にあるウクライナなので色々なことが起きることも仕方ないのかも知れませんが、とにかく自らの進む道がもっとも正しいとして西側諸国を煽るような動きにでてしまいますと本当に取り返しのつかないような、NATOを交えた全面戦争に発展しかねないだけに、ゼレンスキーにはそれを十分に理解した言動を求めたいところです。

ウォール街ではすでに第3次世界大戦に突入し、双方から核弾頭を搭載したICBMが発射されることになれば自動的に全ての株式を売却するという方針もすでに決定済みといった物騒な話も聴こえてきます。
金融市場のことを気にするよりもこうした大戦で生き残れるのかどうかのほうが大きな問題になりそうですが、それにしてもここからのウクライナ戦争については常にこうした危機的状況の引き金を引くことがないことを祈りたいところです。