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日銀の新総裁に植田氏が起用されるという報道は米国市場でも相当な驚きをもって迎えられたようで、どういう人物なのかという報道が飛び交う状況となっているようです。

MITで博士号を取得している同窓のサマーズ元米財務長官は10日にブルームバーグTVの番組内で口を開き、日本のベン・バーナンキだと考えてもいいだろうと発言して注目を集めています。
実際植田氏はMIT博士課程留学時にそのバーナンキとは同窓生であり、イエレン議長下で副議長を務めた著名経済学者スタンレー・フィッシャー氏の教え子でもあるので、いわゆるMIT学派の一員であることから米国での事情通の中での評判は相当高くなっているようです。

上のMITツリーは2010年代に非常にポピュラーなものとなりましたが、近いうちに植田氏がバーナンキのとなりにプロットされることになることになりそうです。
国内市場は株も為替も植田氏の起用報道を受けて比較的冷静な受け止め方をしており、当面は利上げを含めた政策変更はないまま現行政策を当面継続すると見ているようですが、海外勢は必ずしもそうは見ていないところに大きなリスクが生じ始めています。

植田氏の評判とともに高まる海外での日銀の政策変更期待

日銀の緩和継続については、実は米国財務省からもその継続を求められているという報道がでていますが、米国を中心として他国が日銀の緩和継続で市場への資金流動性を維持することを期待しているのは間違いなく、自国はインフレ対策しても日銀は緩和だけ継続するというのも随分と乱暴で身勝手な思惑であることがわかります。
したがって米国としては本来は緩和絶対継続派の沿総裁が誕生することを期待していると思われますが、果たして植田氏がどのように評価されることになるのかにも大きな関心が集まりそうです。

相場ウイークリーでもすでにご紹介していますが、市場は新総裁の体制下でYCCをはじめとする金融政策を変更していくのではないかといった観測が強まりつつあります。
こうなると新総裁就任を待たずに海外の投機筋は日本国債を売り浴びせを再開してくることは避けられそうで、3月10日の日銀政策決定会合にむけてドル円は円高にシフトしていくことを想定しておくべき状況になってきているようです。

まだ次回会合までは1か月近い時間が残されているのでそうした動きが明確に示現するには多少の時間がかかる可能性もありますが、10年債利回りはすでのYCC上限の0.5%に張り付き始めているので、新体制が発足する前にYCCを制御できなくなるといったまさかの事態に陥ることもありえない話ではなくなっていることが気がかりです。

UKのトラス政権の場合、中央銀行の総裁ではなかったもののトラス首相政策失敗の責任をとって辞任したという衝撃の事態も昨年起きているだけに、日銀総裁にも何が起きるかはわからないというのが正直なところで、想定外の相場の動きが示現するリスクにも備える必要が出てきています。
とくに利上げという選択を日銀が行わなくても、YCCの上限を0.5%からさらに0.75%に引き上げざるを得なくなるという動きは十分にありそうで、海外勢は次回この上限引き上げが起きればいとも簡単に1%までは金利が上昇するのではないかと見ているところが非常に気になるところです。
こうなるといきなり日銀が政策運用で市場に敗北という瞬間にもなりかねないので、ここから年度末に向けては想像以上にクリティカルな時間帯になることも予想されます。

黒田総裁は他の副総裁とともに3月中に前倒し辞任か

後任が決まれば黒田総裁は一刻も早く辞任したいと思われますが、実際市場におかしな動きが示現して総裁の花道を汚すことになっては大変ということで副総裁とともに3月中に前倒し辞任となる可能性もでてきているようです。
こうなると植田新総裁は市場の想定よりも早く誕生することになり、それが市場にどのような影響を及ぼすことになるのかにも注目が集まります。

岸田首相はこの人事で10年間に渡って続けてきたアベノミクスの政策と一定の決別をはかろうとしているのではないかといった憶測もではじめていますが、今回の人事では岸田氏の意向が最も重要で、金融政策に変化がでるとなれば意外に早いタイミングからそうした兆候が顕在化することも考えられるところです。
いずれにしても日銀ネタではまだまだ相場が動きそうなので、推測だけで安易にポジションをつくらない慎重さが当面求められるでしょう。