海外FXでは多くのブローカーが仮想通貨FXも商品ラインナップに入れ、しかも大幅なレバレッジを提供しているため、積極的に利用されている国内個人投資家の方も多いと思います。
しかしここのところ堅調に推移していた仮想通貨クラスタで先週仮想通貨取引業者であるクラーケンが、ステーキングの問題から米国の証券取引法に違反したとされて民事制裁金などで3000万ドル(日本円にして約39億4700万円)を支払うことに同意し、このサービスを打ち切ることを表明したことから、ビットコインをはじめとしてそのほかのアルトコインも急激な下落を余儀なくされることとなってしまいました。

BTC一週間の動き

ステーキングとは?なぜこうしたビジネスを取引所が積極的に行うのか

ステーキングについてはすでに仮想通貨界隈で取引されている方はご存じの話しかも知れませんが、これは顧客が保有する暗号資産を一定期間預け入れることで報酬が得られる仕組みのことをいいます。
仮想通貨は一切金利を生み出さないので、長期に保有しても債券のように金利を得ることは全くできません。
しかしステーキングを利用すれば短期で年利10%、20%といった多額のリターンを預け入れる段階で確定して収益が得られるので、大量保有者が強い興味をもつのはある意味当然の話といえます。
ですがいまどき米国のFF金利が5%に近づいただけでも大騒ぎするのに、ジャンク債の利回りをはるかに超えるようなサービスがワークするというのはおかしな話であることもまた事実です。

この話はブロックチェーン利用のマイニングにつながるものですが、PoWでは結局のところ処理能力の高いマイナーのところにマイニングの仕事が集中するようになってしまい、PoWは結果的に中央集権的になってしまったという問題が起きることとなりました。
それを解決するために登場したのがPoSと呼ばれるもので、このSにあたるのがステーキングということになります。

仮想通貨に対する掛け金、すなわち保有量が多いほど、データのかたまりであるブロックをブロックチェーンにつなぎこむ役割を得やすくなるため、他人が大量に保有している仮想通貨を一定期間借り受けて代理保有しておけば承認権限の割り当て確率が高いプルーフ・オブ・ステークはより有利に展開できるというわけです。
さらに保有量の問題だけでなく保有期間も考慮するPoSも登場していることから、ステーキングでは保有量と期間を大きく設定する方法がとられているのです。

ほとんどの大手取引所は大量保有の顧客をビジネス上確認できることからこのPoSのビジネスに参入しており、ややもすればこれこそが収益の大半を占めるものになってしまっているのが実情です。

相場が下落しはじめると大量保有者はなすすべをなくすのがもう一つの特徴

ステーキングを利用する大量保有者にとってはほとんど高額の利息を得られるような気分になるわけですが、実態はマイニングをいかに大量に引き受けられるかのための見せ金のように多額のビットコインなどが利用されているだけで、利益の実態はマイニングの分け前ということになります。
何もしなくても貸し付けるだけで多額の報酬が最初から確定的に得られるのでどんどん利用しても問題ないのではないかと多いと思いますが、この仕組みの最大の問題は一度ステーキングをはじめたら途中で解約ができないという点で、半年で年利20%近い収益を確保できてもその間に暴落がおきてビットコインの価格が半分になっても防ぎようがないのが最大のリスクとなってしまいます。

仮想通貨取引所は日々の通貨売買だけでは利益が限定されることから、こうしたPoSへの参加のために手練手管で新しい仕組みを考えて顧客に提供してきたと思われますが、SECからはこの行為が違法な証券販売と断定されてしまっては取引所ビジネスそのものが継続できなくなることから、クラーケンはサービスをいち早く停止し和解金を支払うことを選択したようです。
しかし同様の状況は取引所競合他社にも及ぶことは必至で、すでに仮想通貨の売買よりもはるかに大きな利益を得ていたこのサービスが終了することは業界全体が沈没することを意味しているのかも知れません。

FTXの破綻をきっかけにこの業界のビジネスの実態があからさまになりつつありますが、レンディングビジネスはもはやこの領域では存続できないところに陥っており、仮想通貨取引所のほとんどがステーキングビジネスから撤退した場合にどれだけの取引所が存続できるのかが大きな問題になりそうです。
どれだけビットコインが上昇しても下落しても、それを即座に取引できる取引所がなければなんの意味もありません。
こうした取引所ビジネスの崩壊こそが仮想通貨を落ち目にする大きな原因になるのではないかという見方も出始めています。

引き続きこの業界のリアルな動向に注目していきたいところです。