パウエルFRB議長は6月23日日本時間の午後11時から定例的に開催されている半期に一度の議会証言に臨み、あらためてFRBが利上げを継続する旨を述べました。
事前にメディア等に配布された発言要旨が午後10時過ぎに明らかになると、ドル円は一気にストップをつけて142.300円レベルと今年最高値をマークする動きとなりました。
ただ議会証言がはじまってすぐにパウエル議長が、利上げプロセスの早い段階ではスピードは非常に重要だったものの足元ではそれはあまり重要ではないと述べたことからドル円は一転して反落し、141.600円レベルまで押し戻される展開となりました。

冒頭証言後の質疑応答で議長は連邦公開市場委員会(FOMC)の今後の計画について、向こう数カ月に利上げを継続するが、ペースはより緩やかなものにすることが理にかなう可能性があり追加利上げのタイミングは入手するデータに左右されると述べたことから、利上げは発表される指標次第ではあるもののかなり緩やかに継続することが明確となりました。
しかし利上げスピードが相当鈍化することも明らかになったことから、ドル円は大きく下げはしないものの上値も重い状態がつづいています。
143円から上に上昇していくためにはFRBの政策以外に別の要因が必要なようで、ここからどんどん上昇していくと考えるのにも無理がではじめています。
とはいえ円安は市場の中心テーマになっており、上値は重くても下値も堅いという相場状況はまだまだ続きそうな気配です。

議会証言するパウエル議長

現状でのFF金利の誘導目標は5~5.25%となっていますが、今後の政策金利は今年年末までに5.6%に上昇すると見込まれており、今後0.25%の利上げが2回どこで行われることになるのかに大きな注目が集まります。
気の早い向きは既に7月に0.25%追加利上げを織り込み始めていますが、果たしてそうなるのかどうかも気になるところとなります。

利下げの話は2024年以降に後ずれの状況

年初にはFRBが早い段階で利上げを停止し、年内早ければ夏には利下げに転じることになるのではといった楽観的な見通しが市場を席捲することとなりましたが、インフレはそう簡単には収まるものではなく、しかも利上げの効果がではじめるのは実施から半年以上ということもあって、リアルな利下げがはじまるのは2024年以降であることが明確になりました。

米国市場はとにかくインフレの沈静化が早期に実現すると楽観視してきましたが、実はそう簡単にはインフレは終わりを迎えないのが現実で、米国の政策金利は利上げが停止になってもかなり長期間高止まりの状況を続けることが予測されはじめています。
したがって日銀がこの間になんらかの政策変更によって量的緩和を終わらせるような動きに出ない限り、金利面から見てのドル円は円高にはなりにくいまま推移しそうな状況になりつつあります。
為替、とりわけドル円は過去40年間きわめて政治的な材料で推移してきているため、日米の金利差だけががそれを動かす要因とはならない可能性もありますが、円安の傾向は引き続き強く示現しそうになってきています。

リセッション懸念の高まりも相場を動かす大きな要因に

ここまでFRBが急激に利上げに臨んだのは過去40年の歴史の中でもグリーンスパン議長時代以来のものとなってきていますが、この利上げを受けて市場では確実に信用収縮が進んでおり、企業の資金調達にも重大な影響がではじめています。
リセッションの進行もここからの市場では大きな問題となりつつあり、景気の悪化からFRBが利下げを行った場合ほぼ確実に株式相場が大きく崩れることになるのも非常に気になります。

リーマンショック以降市場に何か問題が起きればFRBがすかさず金融緩和などの措置をとることで何とかなっていたのがここ14年あまりの相場でしたが、インフレの到来はそれを継続させることが非常に難しくしていることが見え始めています。
ここからのFOMCは次にいつ利上げが行われることになるのかが最大の焦点となりますが、果たして年内2回の利上げだけで本当に米国市場のインフレが終息し年間2%台にまでインフレ率が収まることになるのかが改めて市場関心事となりそうです。
過去のケースを考えると利上げから終息まで2年以上の時間がかかることはざらで、利上げを停止しても2024年中に利下げに転じられるかどうかはまだわからず、状況次第では2025年以降が利下げになることも十分に考えられるだけに金利のここからの推移を十分に注視しなくてはならない時間帯に入ってきています。