このところの米債金利は、FRBの利上げを上回る勢いで上昇を始めています。

これがFRBの利上げと相関した一時的な上昇であれば問題はないのですが、市場ではこの動きをブラックマンデーの再来なのではないかと危惧する声もあり、市場参加者たちは不安を募らせています。

果たしてごく近い将来に、1987年のような大暴落が起きるのでしょうか。

 

過去半年間における米10年債利回りの推移

ブラックマンデー暴落の的中で注目されたアナログチャート分析

1987年10月19日、ニューヨーク市場で突如起こった相場の大暴落により、多くの市場参加者が意表を突かれ莫大な損失を被ることになりました。

暴落の理由には諸説ありますが、投資家のジョージ・ソロス氏が大量に株を売ろうとしているという噂が駆け巡り、導入されたばかりのアルゴリズム取引がこの動きを増幅させたという説が最も有力です。

当時はまだ携帯電話もインターネットもない時代であったため、ウォール街を席巻した人づての噂も、暴落をここまで増幅させた要因と言われています。

 

そんな中、チャートの形状を比較するアナログチャート分析とエリオット波動分析を組み合わせた手法を用いたポール・チューダー・ジョーンズ氏は、この大暴落を見事に的中させ、凄まじい利益を得ることに成功しています。

現在このアナログチャート分析は、AIの領域で多用されるようになっており、過去のチャートデータから相似性の高いものを瞬時に選び出し先行きの予測に利用されています。

2つのアナログチャート分析が煽る相場の先行き不安

現在アナログチャート分析で非常に注目されているのが、直近と1987年の米債券利回りの比較です。

 

直近と1987年の米債利回り比較

 

これだけで、これから36年前のような大暴落が起こると決めつけるのは早すぎますが、チャートの形状が似ていることは確かであるため、注意が必要な時間帯であることには間違いなさそうです。

また、直近のNASDAQと1987年のダウの価格推移もかなり相似性があると言えます。

 

直近のNASDAQと1987年のダウの比較

 

この比較についても、これだけで相場暴落を騒ぎ立てるわけにはいきませんが、上述の債券金利の比較と合わせると、リスクの高い時間帯が迫りつつある状況と言えそうです。

過去の事例から考えると、米債金利が上昇する中なぜかドルが弱含み、債券との正相関を崩してドル安に進み始めた場合は、高い確率で暴落が起きることはすでに確認されているため、ここからは厳重に注意する必要がありそうです。

1987年の大暴落は景気への影響がないレアケース

1987年当初、株価は今に比べかなり低い位置にありましたが、ダウ平均株価は22.6%ほど下落しているため足元の価格ベースでは1日に7500ドル、つまり33400ドルの相場が突如25800ドルあたりまで急降下したことになります。

現在はストッパーが設定されているため、1日に10%以上の下落が起きることはありませんが、当時はさぞかし大変な騒ぎだったことでしょう。

ただ、この一件が米国における戦後の相場暴落の中で極めてレアなケースと言われているのは、暴落が引き金となった不景気が訪れなかったことです。

だからと言って、この先大暴落が起きたとしても1987年当時のように、経済への影響もなく短期間で回復に向かえるかと言うと疑わしいものがあります。

人が絡むことによって形成される相場である以上、いくつかの条件が重なって類似した事態を引き起こすことは考えられますが、どのような分析方法を使ってもそのタイミング(暴落時期)を正確に予測することはできない状況です。

米債金利が驚くほど上昇を始めている状況下においては、何か特異なことが起きる可能性が高いため、10月の相場は月末まで注意深く取引を行うことが重要です。