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イスラム組織ハマスによる突然のイスラエル奇襲攻撃から一週間が経ちました。

事態は日々悪化の一途をたどっており、周辺の中東諸国次第では第五次中東戦争に発展する可能性も出てきています。

10月第二週は週初に米株が下落したものの、「遠くの戦争は買い」という格言通りに値を戻す動きとなっており、市場はこのイスラエルの情勢を見て見ぬふりを決め込む様子が窺えます。

危惧されたWTI先物の原油価格は、リスクオフから回帰したかのように見えましたが、週末に向けてまた再上昇をはじめており予断を許さない状況が続いています。

今後第五次中東戦争が勃発すれば原油価格がまた暴騰するリスクが高く、沈静化しつつある米国のインフレにも再度火が付き、金融市場全体に大きな影響が及ぶことは間違いありません。

 

WTI原油直近1週間の値動き

ハマスは過激派組織ながら選挙で選ばれた政党という複雑な構造

我々日本人にとって理解が難しいのが、パレスチナとイスラエルは長期にわたり一体何をもめているのか、また周辺の中東諸国はなぜパレスチナを支持するところが多いのかという基本的な部分です。

そもそもこのハマスは、パレスチナのガザ地区を実効支配する組織で、2006年のパレスチナ評議会選挙で過半数の議席を獲得し政権を握っている状態です。

ハマスが選挙で国民から選ばれた政党であることには驚きですが、この組織は行政も管理しており、民衆に対し教育や医療、福祉などの分野で地道な活動を続けていることから、パレスチナの貧困層の間では絶大な支持を得ています。

その一方でハマスは、今回イスラエルに対する攻撃を行ったイズ・アッディーン・アル・カッサム旅団という軍事組織を擁する過激派武装勢力でもあります。

このように、ハマスは政治的な側面と軍事的な側面の両方を合わせ持つ組織であるため、パレスチナ人のハマスに対する評価は、我々が極東の離れたところから認識するものとかなりの違いがあります。

国際社会ではこのハマスをテロ組織と認識していますが、周辺の中東諸国が必ずしもそう評価していないところが、今回の衝突の行方を複雑にしていると言えます。

イスラエルはハマスに対し陸海空から大規模な攻撃計画を準備

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イスラエルは今回のハマスの奇襲攻撃を受け「戦争状態に入った」と宣言しており、西側メディアからは、イスラエルがハマスに対して近く陸海空からの大規模な攻撃を計画しているという報道もあります。

実際にネタニアフ首相が宣言する「報復」が始まり戦争が本格化すれば、周辺諸国がどうこれに反応するかに注目が集まります。

すでにイスラエルとの国交のないサウジアラビアは、パレスチナ支持を打ち出しており、ハマスの背後にいるとされるイランとも話合いのための準備が進められています。

また、ハマスと同様の政治組織であるレバノンのヒズボラがイスラエルを攻撃したように、今後この戦争に加担する国が顕在化していく恐れもあります。

 

中東は過去に4回もパレスチナをめぐる地域戦を繰り広げ、そのたびに原油価格が高騰していたため、今回も足元で一旦落ち着きをみせた原油価格が一気に上昇するリスクが高まっています。

特にサウジアラビアやイラン、UAEなどBRICSの新たな加盟国が石油価格に与える影響は大きく、今後の金融市場にも大きな影響が及ぶことは覚悟しておかなくてはならない状況です。

最新の報道では、イスラエルが地上戦を行うならイランもそれに介入し参戦するといった話も出始めています。

ウォール街ではこの戦争の行方を楽観視しているようですが、原油価格の暴騰が株式相場に都合のいい材料を提供するはずもないため、やはり株や債券、為替に悪い影響が及ぶ可能性は十分意識しておく必要があります。

特に為替相場は、これまでと全く違う方向に大きく動く危険性があるため、憶測や思い込みだけでトレードするのは非常に危険です。
あくまでも相場が動いたのを確認してから先行き判断を行いたいところです。