中央銀行の政策発表ウイークは、政策発表前後に相場が大きく変動することはよくある話ですが、10月最終週となった先週はまさにそれが示現した一週間となりました。

劇的に変化する市場のセンチメントに、翻弄されたトレーダーも多かったことでしょう。

ただ、市場参加者たちは先行きを楽観的に判断しており、後になって現実との乖離が大きくなる可能性もあるため、ここからはいつも以上に注意深いトレードを心がける必要がありそうです。

ドル円は一旦下げがきつくなる可能性も

先週は日銀政策決定会合のリーク記事やその後の政策発表、さらにはFOMCの政策発表の影響により、ドル円は落ちては上昇しその後また落ちるという不安定な展開となりました。

事の発端となったのは、日経新聞による日銀会合前日のリーク報道で、イールドカーブ・コントロール(YCC)の上限を再調整するという内容に、海外勢は緩和政策の修正を持ち出すと予想し、30日のニューヨークタイムにドル円は一時的に148.854円レベルまで下落しました。

31日の東京タイムには、日銀が緩和継続とイールドカーブ・コントロール(YCC)の再柔軟化を発表したことによりドル円は一斉に買戻しが進み、とうとう151.700円という年初来高値をつける展開となりました。

財務省の神田財務官からは「介入スタンバイ」発言があったものの、同日2.7円という大幅変動を受けても介入には至らず、そのままFOMCを迎えることとなりました。

今回のFOMCで追加利上げはないことを織り込んでいたため、相場に大きな動きはありませんでしたが、その後行われたパウエル議長の会見を受け、市場は利上げ終了と来年6月までの利下げを見込んだため、株式市場は歓迎ムードとなり暴騰し、米債金利は大幅に下落、ドル円は債券金利とシンクロするように下げ相場となりました。

祝日の3日は何とか150円を維持していたものの、取引開始前に発表された米国雇用統計の非農業部門雇用者数が前月比の15万人増という市場の予想を下回る内容であったため、ドル円はさらに下値を試す展開となりました。

この結果には、全米自動車労組(UAW)による三大自動車メーカーでのストライキが影響したものと見られます。

また、平均時給の前年比での上昇率は約2年半ぶりの低水準となったほか、失業率は3.9%と前月の3.8%から小幅上昇し、昨年1月以来の高水準を更新しました。

米10月のISM非製造業景況指数は予想を下回り51.8となったことから、米債金利はさらに下落し、それに呼応するかのようにドル円も148.212円レベルまで下値を試す展開となりました。

その後は、31日の早朝に付けた148円台後半まで下落することはありませんでしたが、結果的には8割近くの行って来い相場となった一週間となりました。

 

先週一週間のドル円の動き

 

先週週足ベースで長い上髭をつけたドル円ですが、テクニカル的に見ても週明けは上値の重い展開が続きそうなため、さらに下落に転じるリスクも意識しておきたいところです。

日米金利差を考えると147円以下までの下落は考えにくい状況

先週一週間は非常にボラティリティの大きい相場となりましたが、週明けは大きな指標発表もなく金曜日は米国が休日ということもあるため、為替相場は比較的大人しい動きになることが予想されます。

米国10年債利回りは5%が目前に迫る勢いでしたが、先週後半にかけて急低下しており、この動きが今週以降為替相場にどう影響するかが気になるところです。

 

Data FT

 

しかし日米の金利差を考えると、ここから一方的に円高にシフトするとは考えにくいため、下落が進めば押し目買いのチャンスとなることを意識しておく必要があります。

ドル円は日足ベースで長らく上昇が続いているため、そろそろ自律的に一段落することも考えられますが、介入のようなよほど大きな材料が出ない限り、147円を下抜け145円にまで到達するような状況にはならないものと思われます。

ただし、思い込みに依存すると思わぬ損失を招いてしまう可能性もあるため、常に冷静な状況判断を心がけておきたいところです。

ユーロドルは反発一巡後の反落に注意

今年の7月から長きにわたり下方向のトレンドを示現してきたユーロドルですが、先週末にドルの下落と逆相関し一時1.0747まで急伸する場面がありました。

一目均衡表転換線の基準線や雲下限、21日移動平均線、ボリンジャーバンドなどを完全に上抜けすれば、流れはより大きく変化するものと思われますが、ドルが再度反転上昇すればまた反落に気を付ける必要があります。

ユーロドルは例年、年末に実需が作用し強含む傾向がありますが、今年はどうなるかが気になるところです。

 

先週一週間のユーロドルの動き

6日から欧州も冬時間に突入、相場に変化が出る可能性も

6日からは欧州に引き続き米国も冬時間に突入するため、市場開始時刻が1時間遅くなり、あらゆる指標発表の時間が1時間繰り下げられます。

さらにニューヨークタイムのオプションカットは、日本時間の23時から深夜0時に繰り下げられ、ロンドンフィキシングも25時に履行となるため注意が必要です。

冬時間のスタートは日本の個人投資家にとってデメリットになることもあるため、この機会に改めてトレード方法の見直しを行う必要がありそうです。