17日の日本時間午後3時に発表された6月のFOMCの政策発表内容は大方の市場の予想通り変更はありませんでしたが、ドットプロットから2023年末までに2回の利上げが行われる可能性が示唆されたことから米債金利が大きく上昇することとなり、ドルストレートが大幅にドル高に動く展開となりました。
市場はとにかくテーパリングと利上げに異常とも思えるほど敏感になっており、いつ利上げになるかわからないこうした見通しにすらドル買い、株売りが凄まじく進んでしまったことから見ても市場は非常にFRBの政策に猛烈に依存していることが窺える状況となってきました。
これまでもドットプロットはFedウォッチャーの間では話題になることも多かったですが、長期的に眺めていますとほとんど当たったためしがないものであり、別のリスクの顕在化も危惧されるところとなってきています。
パウエル議長の任期は22年2月
今回の声明と同時に公表された四半期ごとの経済予測・通称ドットプロットではFOMC参加者18人のうち13人が23年末までに少なくとも1回の利上げがあると予想しています。
こうした予想を示したのは今年3月時点では7人でしたから確実に増えているのは事実です。
また11人は、同年末までに少なくとも2回利上げがあると予想、また早ければ来年、22年中に利上げがあると見込んだ参加者は7人おり、前回の4人から増えたことにも市場は大きく反応しています。
パウエル議長の任期は2022年2月までとなっていますし、今回のFOMCで投票権をもつ委員の入れ替えも起こるわけですからこのタイミングでのドットプロットの変化だけをもってしてこの先2年の利上げを見通すことは出来ないのですが、市場の敏感度は凄まじいものを感じさせられます。
傑作なのはFOMCの結果発表とパウエル議長のネット会見を終えたあとのホワイトハウスの対応で、米バイデン政権の当局者は16日、FRBが利上げ時期の見通しを前倒ししたことについて、政府の長期的な金利見通しに影響はないとの認識を示してすかさずけん制をしています。
つまり利上げについてはFRBが単独で決定できないことを暗に示しているわけで、ホワイトハウスの意向が優先されることになり、中央銀行の中立性はもはや相当怪しいところにあることが見え始めています。
最近ではパウエル議長とホワイトハウスはかなり親和性に欠けるという指摘もあるようで、そもそもトランプ政権下で任命された人物だけに、来年2月の任期でブレーナード理事に入れかわることになればまた政策は大きく変化するかと思われます。
バイデン政権はそう簡単に金融緩和を終了させない
バイデン政権の大きな政府による政策発動はまだ始まったばかりの状況で、この段階ですぐに利上げをして財政出動の金利負担を大きくするような政策を実施する可能性はかなり低そうで、逆に延々と低金利を継続させる可能性すら感じられるものがあります。
先のG7では参加国が引き続き政府の財政出動により景気を下支えして成長させることを確認していますから、米国の巨額の財政出動による景気浮揚策はまだ続くことが予想されるところです。
市場はFRBのテーパリング、利上げ観測に躍起の状況ですが、結果的にはそんな動きは出ないまま進行することも考えておく必要がありそうです。
米国は従来の資本主義の形態から大きく離れた動きをとりはじめており、金融市場にも大きな変化が現れる可能性がでてきています。