日本国内ではあまり関心が持たれていませんが、中国大手不動産ディベロッパーである恒大集団のデフォルト危機が一段と高まっています。

中国企業のデフォルト問題は最終的に中国政府が手を打つだろうという楽観的な見通しが市場に漂うことから今回も似たようなものでないかと金融市場は今のところあまり意識していませんが、実は習近平の規制政策の実施で多くの民間企業はかなり危機的な状況に陥っています。

どこの資本主義国よりも自由な資本主義経済的成長を遂げてきた中国は作為的に大きな方向転回をはかろうとしていて、その中でこの不動産ディベロッパーも完全に見捨てられてあっさりデフォルトする可能性が高くなっています。

その場合過去にないほど世界の金融市場に影響が出ることが徐々に懸念され始めています。

中国大手不動産ディベロッパー恒大集団とは

Photo Bloomberg https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-09-13/QZDH9BDWLU6E01

今回デフォルト危機で注目の的となっているこの恒大集団は1996年に設立された不動産会社で、近代的な不動産業として歴史のある会社です。

日本国内で言えばダイエーのように高度成長期に借金して土地を取得し、その価格が上昇した部分を担保にしてさらに借金して次の不動産を取得するといった手法で不動産投資を行うことで急成長を遂げた企業です。

また多角経営にも積極的でテーマパークからプロサッカーチーム、ミネラルウォーター、電気自動車開発まで幅広い商品に手を出していてその知名度は非常に高く、中国国内では誰もが知っている会社といえますが、残念ながらそのどれもうまくいっておらず、結果的に負債を大きくする材料として機能してしまっています。

実は昨年9月ごろから中国政府が不動産バブルの規制に乗り出したあたりから急激に本業の不動産事業がうまくいかなくなり、金融機関からの融資が受けられなくなったのが大きな原因となっているようで、ここへきてデフォルト懸念が急激に高まりを見せています。

ドル建て債券投げ売りでもはや風前の灯か

9月に入ってからこの恒大集団は多額の銀行借り入れの利息支払いを停止に踏み切り、この報道を受けてドル建て2025年満期の債券の投げ売りを始め、格付け会社も総じてその格付けをデフォルト一歩手前まで引き下げていることから、デフォルトがもうごく近い将来に起こりそうな状況です。

仮にデフォルトになると日本円にして33兆円の負債となり金融機関から取引先、投資家に至るまで相当な影響が広がることが懸念されています。

また中国ではジャンク債の投げ売りも始まっており、すでに大変な騒ぎになっています。

さらにこの会社は外側に出ない形で期限の過ぎた短期の支払手形もすでに10兆円を超えているといった報道も出ていることから、事態は相当深刻です。

問題は日米市場へのリスクの広がり

この会社がデフォルトになった時に大問題なのが、ドル建ての債券も同時にデフォルトするので米国をはじめ日本でも投資信託にこうした商品を採り入れていたものが大きなダメージを受けることです。

2008年のサブプライムローンの問題が発生した時にも当初はなんの影響もないとされていましたが、かなりの債券が投資信託商品に組み入れられていたことから、後から多くの影響が出たことは記憶に新しいです。

今回も中国企業起因で同じことが起きる可能性は十分な認識が必要であり、これが市場大崩れの引き金となることも警戒しておかなくてはなりません。

この時期中国天安門広場にブラックスワンが舞い降りたという嘘のような本当の話も登場しています。

これが本当に世界的な金融危機に発展しないことを願いたいところです。