米国SECは6月6日に世界最大の仮想通貨交換業者であるバイナンスホールディングスとそのCEOの趙氏を提訴したことから、ビットコインをはじめとする仮想通貨は全般に大きく下落する展開となりました。
その後一旦は値を戻す動きになりましたがこの提訴問題の影響は深刻で、週末また値を下げて推移しています。
昨年のFTXの破綻問題以降、もっとも市場が大きい米国における仮想通貨取引所の事業は問題ばかりが起きるようになっており、このままでは取引所の存在が仮想通貨の市場を壊滅に追い込みかねない状況が示現しはじめています。

提訴されたバイナンス趙CEO

ビットコインは下げたといってもまだ一定の価格を維持していますが、アルトコインやバイナンスコインなどは厳しいところに追いやられはじめており、今回の問題をきっかけにして整理されるものもでるのではないかといった悲観的な見方が市場に出回り始めています。
株式市場で言えば個別株の取引ができる大手の証券会社が次々消滅しているようなものなので、状況は外から見ているよりはるかに深刻なものと言えます。

SECは米国でライセンスを持たない取引所で米国民が取引することを厳禁している

米国の金融当局は米国民が金融取引を行うにあたって、米国内で事業ライセンスを保有している業者の利用することだけを厳格に求めています。
これは仮想通貨に限ったことではなくFXでも米国内を本拠地とするブローカーを利用することが必須条件となっており、他国の海外FXを利用することはできないのが実情となっています。
このことは米国外に拠点を置くブローカーは非常によく理解しており、口座開設時に米国民であることがわかると開設を拒否するという厳格な対応をしています。
業界最大手のバイナンスがこの規制を全く知らずに営業をし、米国民の取引を許していたというのは実は大問題で、売買できる商品についても細かく米国の金融当局に申請して上場させることが必須となっています。

今回バイナンスは完全にこの部分の規制にひっかかるものとなっており、米国未登録の取引所で米国民の取引を許容した行為とさらに米国内で未登録証券の販売を行ったことが提訴に至る決定的な問題と指摘されています。
ゲンスラーSEC委員長は13の事案から、趙氏とバイナンスが広範な詐欺や利益相反、情報開示の欠如、計算された脱法行為に従事していたと我々は申し立てるとしており、法的な判決が申し渡される前にバイナンスは米国から撤退を余儀なくされるであろうことは間違いない状態で、また米国から仮想通貨取引所が消滅することになってしまいました。

米国での取引開始直後に起きた問題であればいざ知らず、すでに何年も営業をしていてこうした基本的な問題を指摘され、仮想通貨ではもっとも大きな市場である米国から廃除されてしまうというのは残念な話で、この業界が全体として未分化かつコンプライアンスに対する意識が著しく低下していることを改めて感じさせられる次第です。
米国の金融当局のこうした厳しい対応はG7の主要国でも横並びで連鎖していく可能性が相当高く、主要国の市場から大手の取引所が排除されることが危惧されます。
アルトコインはもとよりビットコインについても多くの国が別に取引できなくなっても市場に支障はないという認識をもっているため、取引所の排除が進むことはビットコインの価値の縮減にもつながりかねず、ここからの取引には相当な注意が必要になってきているのが正直なところです。

取引所の撤退と減少は仮想通貨市場そのものを縮減させるネガティブな要素に

仮想通貨の時価総額は2018年リーマンショック前後に一旦ピークを迎えその後低迷する時期もありましたが、2021年のパンデミック発生後のカネ余りの時期を経てここ2年近くはかなり大きく市場を伸ばしてきました。

その中心にあるのはやはりビットコインでしたが、昨年のFTXの破綻問題あたりからまた時価総額での市場規模は縮減しはじめており、そこに今回のようなバイナンスの問題が浮上してきているため追い風になるものがないというのが現実の状況になりはじめています。
仮想通貨の場合、特定の国の金融当局に紐づいていないことから自由度の高さが魅力となるはずなのですが、それを取り扱う取引所、交換所といった基本インフラが強烈な規制をかけられるというのは市場関係者がほとんど意識しなかった根本的な問題で、このままでは米国の仮想通貨市場は世界の中心から脱落するのはもはや間違いない状況に直面しているようです。
ドルと等価交換のできるステーブルコインも米国市場ではすでに機能しておらず、このままでは取引所という基本インフラの部分から市場が崩れかねないことを個人投資家は意識せざるを得ない時間帯に突入してしまったようです。

海外FXでは仮想通貨FXをハイレバレッジで取引できるのが大きな魅力となっていますが、急激な価格変動がここから頻繁に起きることは防ぎようがなく、ゼロカットシステムを利用してとにかく失っても構わない金額だけを投資原資として利用し、まさかのときにはその金額を上限として割り切ったトレードをすることが肝要になってきていることを感じます。
そういう意味では追証を求められない海外FXでの仮想通貨FX取引はかなり安全なものであることを改めて認識します。