市場では12月13日(日本時間14日午前4時)に行われるFOMCの政策発表が、クリスマス前の一大イベントと認識されますが、クリスマス前には19日にも日銀政策決定会合が控えています。
市場参加者のほとんどが、今回も何もなく通過するであろうと予想していますが、過去の事例を見ると12月の会合で政策変更が行われるケースが少なくありません。
ここ15年の動きを見ると、2008年にはリーマンショックの影響を受け政策金利を0.1%に引き下げており、2009年の12月には、リーマンショック以降止まらない円高対策とデフレ対策として、期間3カ月の資金を0.1%の金利で貸し出す新型オペを導入しています。
さらに2012年の安倍政権発足時には、黒田前総裁の着任前から追加緩和と物価目標を掲げており、2022年12月には、黒田体制下でイールドカーブ・コントロールの上限を0.5%へと引き上げています。
このように、日銀はこれまで12月に政策変更を行うことが多々あり、そのたびに市場は師走の日銀ショックに見舞われてきたことがわかります。
今年12月の日銀会合は「動かざること山の如し」
これまでの経緯を見ると、今月の日銀政策決定会合でも何かしらの政策変更が行われる可能性があるため、就任以来2度の政策修正に動いている植田総裁がどのような発言を行うかが気になるところです。
足元では米国金利が急激に低下しており、一時は152円超えが心配されたドル円相場も現在は自律的に5円近く下落しているため、この時期に慌ててイールドカーブ・コントロールを変更する必要性はないものと見られます。
植田総裁は来年の春闘の結果を見てから政策変更を考えるという姿勢を示していますが、ハードル自体を引き抜きはっきり見えないようにしながら、緩和政策を続けたまますでに1年が経とうとしています。
ここのところ見かける日銀OBによる年明けの政策変更予測は、むしろ変更すべきであるという強い主張とも受け止められます。
しかし緩和継続を条件に総裁の座を射止めた植田総裁としては、そう簡単に緩和をやめるわけには行かないのが現状です。
岸田首相は来春、国賓として米国議会で演説をすることが決定しているため、株価の安定に神経質になっているバイデン政権に日本の金融政策がもたらす影響を気にかけるはずです。
一般的に考えれば訪米までに金融政策をいじるのは御法度であり、訪米を花道に内閣が辞職ともなれば、日銀も金融政策を簡単には変更できないであろうことは容易に想像がつきます。
そうなると少なくとも来年4月に行われる日銀会合まで、政策変更は行われない可能性が高くなります。
欧米が利下げに踏み切る中、周回遅れの日銀利上げに注意
為替相場はすでに来年の動向を気にする時期に入っていますが、2024年に最も危惧されているのが、米国や欧州がインフレ対策から行ってきた利上げを終了し利下げに転じる中、日本だけが周回遅れで利上げを余儀なくされる状況です。
もしそうなれば、日米の政策コントラストは決定的なものになり、これまで行われてきた円キャリートレードの巻き戻しを含め、一気に円高となるリスクが高まります。
2008年のリーマンショックでは、リーマン・ブラザーズの破綻が伝わった同年の9月に108円レベルだったドル円が104円レベルまで下落しましたが、そこから年末までの3か月間にさらに20円近くの急激な下落を記録しています。
現在の水準で言えば127円レベルまでの下落となり、そのインパクトは想像以上であるため、今後どのタイミングで日銀の利上げが行われるかが、円の明暗を分ける重要なポイントとなりそうです。
日銀は色々な背景を踏まえ政策変更を実施しようとしているという日銀ウォッチャーの解説もありますが、実際には今まで行われてきた債券の人工値付け相場を手放す様子はなさそうで、今後も緩和を継続していくであろうことが窺えます。
これで米国が不景気になるようなことがあれば、緩和継続が正しかったと勝利宣言する可能性さえもありそうな状況です。
ドル円はまさに金融政策の結果として打ち出される水準であるため、この先さらに下落することも逆に再上昇することも想定しつつトレードを行う必要があります。