去年11月、世界最大のヘッジファンドであるブリッジウォーターの創始者レイ・ダリオ氏の著書「変わりゆく世界秩序( The Changing World Order)」に関する記事を掲載しました。

>>レイダリオがとうとう口にしはじめたビッグサイクルにおける革命・戦争フェーズへの突入

著書の中でレイ・ダリオ氏は、過去のビッグデータを基に導き出した、500年にわたる人類史のビッグサイクルを紹介しており、現在はその第六フェーズとなる革命と戦争に突入したことを警告する内容になっています。

 

 

去年の11月と言えば、ウクライナ戦争の開始から半年ほどが経過するも全く終戦の兆しが見えなかった頃ですが、パレスチナ情勢が緊迫の度合いを増している現在となっては、いよいよレイ・ダリオ氏の指摘が信憑性を増すばかりです。

そんなレイ・ダリオ氏は最近、向こう10年で第三次世界大戦が勃発する確率は50%にまで上がっていると警鐘を鳴らしています。

世界最大のヘッジファンドのCEOであり、あまたの投資戦略を実践してきた人物の分析であるだけに、ウォール街やファンド運用者たちはこの事実に大きな関心を持っています。

「遠くの戦争は買い」という市場の楽観視を一蹴するダリオ氏の分析

この分析は、レイ・ダリオ氏自身によるものではなく、完全にビッグデータのコンピュータ解析によりはじき出された結果であり客観的な予測である点が大きなポイントです。

向こう10年以内に第三次世界大戦が勃発するとなると、ロシアや中東諸国ではなく中国と米国がアジアを戦場とし対立することが考えられ、そうなれば日本が戦争に巻き込まれる可能性は大いにあります。

レイ・ダリオ氏は、この分析について詳細を明らかにはしていませんが、戦争のシナリオについてある程度の見解は持っているのではないかと思われます。

いよいよ戦争リスクを織り込み始めた金融市場

この分析は政治学者や経済学者によるものではなく、ほかならぬレイ・ダリオ氏によって予測されているということに、金融市場は大きな衝撃を受けています。

これまで、悪材料やリスクを無視し楽観的に投資を展開してきたファンド運用者も、その多くが戦争のリスクにどう対応するか、またそれに巻き込まれないためにどう投資行動を変化させるかに神経を使い始めている状況です。

そもそも株式市場は平和の配当として得られるもので、戦争をしながら株だけ上昇してもほとんど意味がありません。

安全な投資先という視点で考えると、世界大戦が勃発した場合、米債やビットコインが安全という話はことごとく覆される可能性が高く、もはや地球上に安全な場所や安全な金融商品はなくなってしまう可能性さえもあります。

ウクライナやイスラエルに深く関与する米国は、自らは戦争に軍隊を出兵させることはしないものの多額の資金援助で背後から戦争をコントロールしようとする姿勢も気になるところです。

直近ではイエレン財務長官が、米国がウクライナとイスラエルの二正面作戦に対応することは十分に可能と発言していることに対しても市場は疑問視しています。

金本位制のなか繰り広げられた過去の世界大戦では、“カネ”が枯渇したことにより戦争終結に至ったわけですが、イエレン財務長官の発言からは紙幣の増刷に意欲的である姿勢がうかがえるため、そうなればインフレの再来も危惧されるところです。

多くの投資家が世界戦争勃発を意識しながら投資を行う時代にシフト

足元のイスラエル情勢は地上戦への突入が遅れているため、周辺の中東アラブ諸国がどのように介入してくるのか、またハマスの背後にいるイランがどこまで戦争に関与するのかがはっきりしていない状況です。

これが本格的な地上戦となった場合は、金融市場における市場参加者の投資行動は一斉に変化する可能性があるため、個人投資家としても突然遭遇するかもしれないリスクに備えておく必要があります。

実態が不透明な政治や戦争を投資の視点で捉えることは非常に難しい事ですが、金融市場はいよいよ危機的な局面に入っていることをしっかり意識しておきたいところです。